JTB中間決算、全セグメント増収で61億黒字 営業利益は4年ぶりに黒字に

JTBが11月17日に発表した2024年3月期中間決算(23年4月1日~9月30日)の連結純利益は、前年を89億9900万円上回る61億500万円となった。新型コロナウイルスの2類から5類への移行や人流の回復から、売上総利益は全セグメントが増収となり、中間決算は4年ぶりに営業黒字に。個人旅行、団体旅行ともに回復して増収増益となった。山北栄二郎は「市場の回復を捉えながら、交流の価値最大化に向けた経営を進める」と話す。

山北社長

売上高は、前年同期比32.1%増の5100億6千万円、営業利益は87億2300万円(前年同期は46億5800万円)、経常利益は120億2千万円(同22億2900万円)だった。

旅行事業の売上総利益は、国内旅行が前年同期比25%増の466億円(2019年同期は535億円)、海外旅行が同489.2%増の183億円(同565億円)、訪日旅行が同677.4%増の60億円(同93億円)、グローバル旅行が同218.4%増の65億円(同91億円)。

営業経費は、旅行需要の回復による売上高の上昇に伴い、前年同期比12.9%増の125億円に増加。経費は増加するも、固定費は935億円となり、2019年同期に比べて273億円削減した。コロナ禍以降に実施してきた人材の最適配置や店舗改革、従業員のスキルアップの効率化が現れた。変動費は160億円だった。

純資産は1300億円(2019年末は1572億円)、自己資本比率は17.6%(同24.3%)。

2024年3月期の通期連結業績予想は、5月に発表した数値と変わらず、売上高が前年同期比12.8%増の1兆1034億円、営業利益が134億円としている。

山北社長「海外旅行は2025年に完全回復」

決算会見の様子

同日には、決算会見を実施。冒頭、山北社長が青森県青森市での入札案件における大手旅行会社5社による談合の疑いが報じられていることを謝罪した。11月15日にはJTB青森支店を公正取引委員会の立ち入り検査が実施されており、山北社長は検査への全面協力するほか、社内でも徹底的に事実確認の調査を進める方針を示した。公正な取引やコンプライアンスの順守を前提として、入札のプロセスなどに関しても再確認する。

旅行需要について、山北社長は、「国内旅行は非常に活発だが、海外旅行は円安や原油高、物価高の影響を受け、本格的な回復に道半ばだ。訪日旅行は台湾、米国のほか、中国の需要が着実に戻っている。グローバル旅行も欧州が堅調だ」と説明した。海外旅行の回復度合いは、コロナ前と比べて、今年度は50%台、来年度で80~85%、2025年での完全回復を見込んでいる。

インバウンド需要の獲得に向けては、アドベンチャー、ガストロノミー、サステナブル、メディカルの4つのテーマ性ある商品、観光ルート開発を進める。「地域に分散して訪れる仕組みを作る」と山北社長。

地域関連の事業では、ワクチン接種やコロナ対策の事業はほぼ終息。経済対策関連では、観光支援や観光地のコンテンツ開発、クーポン施策など、地域のニーズに応える事業が大きくなっている。

DXの投資については、顧客接点において、旅マエでの情報提供や店舗でのデジタルサイネージの活用、顧客接点におけるチャットGPTや生成AIの活用を行う。着地型旅行では、施設への入場やMaaSをワンストップでの提供を目指す。社内においては、ロボティックによる処理や、宿泊施設など事業パートナーの人手不足に対応する仕組みの提案を行う。

店舗数は、2019年度の480店舗から284店舗まで縮小。今後は、店舗自体の機能の多様化を図り、海外旅行やテーマに特化するなど専門性の高い店舗の設置や、店舗内におけるデジタル機器を使った地域のプロモーション活動などを展開する予定だ。

採用に関しては、新卒採用を強化し、2024年新卒は450人ほど採用する予定。中途採用は常時行う。山北社長は「人材の回復が観光産業の復活に大きな鍵をにぎる」と述べた。

非旅行事業への投資については、観光地を高付加価値化するための地域への誘引コンテンツの開発など、デスティネーションに関する投資を強化する。このほか、ビジネスソリューションに関するデジタル投資も加速する。

© 株式会社ツーリンクス