都電「男性専用車両」出発進行!痴漢えん罪への不安訴え 「日本弱者男性センター」が企画 男性の性被害きっかけ

NPO法人「日本弱者男性センター」が18日、東京さくらトラム(都電荒川線)の車両を借り切り、東京都荒川区の三ノ輪橋駅~新宿区の早稲田駅間で「男性専用車両」を運行させた。19日の「国際男性デー」を前に、男性の性被害やDV被害、痴漢えん罪への不安を訴えるイベント。スタッフや報道関係者、同センターの呼びかけに共鳴した25人が乗車した。

2022年の国際男性デー、2023年の父の日に続く3度目の「男性専用車両」。同センター理事長で会社員の平田智剛さん(25)は2022年7月、同センターを設立。「男性でも性被害に遭う人がいる。今の世の中、性被害者は女性で加害者は男という偏見がある。本当にそうなの?って考え直す機会が欲しいと思い、この企画をやらせてもらっている」と訴えた。

平田さんは、学生時代に電車内で女性から痴漢被害に遭った。「もしえん罪になっちゃったらどうしようと思って、すごく怖くて助けを求めることができなかった。女性は言いづらいだろうけど『助けて痴漢だ』と言える環境があるが、男性にはそれがない。被害を受けている男性の方が『おまえ痴漢だろ』という風になっちゃう。それが怖くて助けを求められなかったという経験があって、この活動を始めた」と自らの経験を語った。

「弱者男性」と「男性専用車両」。パワーワードもあってか、第1回運行はSNS上でもバズったが、同センターのスタッフは「男性専用車両イコール女性の権利を奪う、みたいなことを言われて、非難ごうごうだった」と振り返る。「僕らは別に男性優位、女性差別をしようと思っているわけではない。むしろ女性専用車両を一日中やればいいと思っている。その代わり、僕らの男性専用車両を造ってというだけの話なので、別に女性差別をしようとしている団体ではない」と真意を語った。

島村和宏さん(48)は、元妻からDV被害を受けた。島村さんは格闘技の選手で、殴り返せば刑事事件になるという不安があり、抵抗できなかったという。「男性が女性に殴られるものという認識がない。そもそも人間として、殴り返してはいけない。殴り返せなかったから、被害者になった。男性に対しては社会の支援がない。明らかな差別がある。被害者は立ち上がるべき」と、男性DV被害の現実を発信すべく、弱者男性センターの広報となった。

12・2キロをノンストップで、約50分間運行された男性専用車両には女性の姿も。同センター副理事長で主婦の女性(59)は、2022年の初回運行のニュースを知って活動に加わった。夫や子どもから、満員電車での痴漢えん罪の不安を聞かされていい「ラッシュ時には『緊張する』と言っている。女性専用車両が導入された際には共感しましたが、男性専用車両も導入すればいいのにと思う。お金目当ての痴漢えん罪も多発している。なぜ女性の言い分ばかりが通るのか」と憤る。

ニュースで男性専用車両の運行を知り、乗車したという都内の男子大学生(22)は「単純に男性専用車両という響きに興味があった。やっぱり満員電車で女性が隣にいると、腕を上げたりする。痴漢えん罪の恐怖とかが無くなるのであれば、欲しいなと思う」と、本格導入を要望。都内の派遣社員の男性(28)は「女性に触れてしまったらどうしようという不自由さはないので、リラックスして乗れました」と感想を語った。

理事長の平田さんは、日本弱者男性センターという法人名に「どういう名前なんだ、ってよく言われますけど、あえて弱者とつけた。男性でも弱者っているよね…と考えてもらうために、あえてつけた」と狙いを語る。

「男性優位社会とか、女性優位社会とかそういう言葉がなくなればいい。どっちが優位かというような考えがそもそも間違っている。東京メトロとかでも朝とかに女性専用車両とかあるんで、この時間だけ男性専用車両1両があったらそれが理想と思う」。鉄道会社への本格導入を訴え、全国で路面電車を借り切り「男性専用車両」を運行させる計画だ。

(よろず~ニュース・杉田 康人)

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