パズル的楽しさを持つソロモードとアツい対戦モードを備えた良作!「ウォークラフト ランブル」レビュー

ウォークラフト ランブル」をレビュー。RTSの金字塔といえる「ウォークラフト」の世界観を使った、スマートフォン向けのアクションストラテジー。お手軽ながら奥深い、その魅力を紹介する。

「ウォークラフト ランブル」は、Activision Blizzardからリリースされたスマートフォン向けのアクションストラテジー。タイトルが示す通り、本作はPC向けのゲームとして展開されている「ウォークラフト(Warcraft)」シリーズの流れを汲んだ作品だ。ただ、シリーズ作品がいずれも日本語に対応していないので、日本での認知度はそれほど高くない。このため、「ウォークラフトって何?」…という人も少なくないだろう。

しかしながら、「ウォークラフト」を知らないからといって本作を見逃すのはもったいない。本作は、それほどよくできた良作ゲームなのだ。そこで、本作の魅力について、「ウォークラフト」シリーズの魅力まで含めてこの記事でお伝えしたい。

■ファンタジー・RTSの金字塔!「ウォークラフト」シリーズ

「ウォークラフト」のタイトルを冠するシリーズには、リアルタイムストラテジー(RTS)として作られた「ウォークラフト」シリーズと、MMORPGとして作られた「ワールド・オブ・ウォークラフト」シリーズがある。全体の基礎となっているのはRTSの「ウォークラフト」シリーズ。ファンタジー世界を舞台としつつ、人間=善ではないという世界観や、RPGのようにレベルアップしていくヒーローユニットの存在など、他のRTSにはない特徴を持っていた。とりわけ「ウォークラフトIII」は、マルチプレイ・オンライン・バトル・アリーナ(MOBA)ジャンルが生み出されるきっかけとなった作品であり、RTSの金字塔といっても過言ではないシリーズなのだ。

ちなみに、デジタルトレーディングカードゲームである「ハースストーン」は「ウォークラフト」の世界観が使われている。このため、「ハースストーン」をプレイしたことがあれば、「ウォークラフト」シリーズに触れたことがなくとも、馴染みのあるキャラクターが存在するだろう。

■RTSやMOBAのニュアンスをグッとお手軽にした「ウォークラフト ランブル」

本作、「ウォークラフト ランブル」は、シリーズの原点であるRTSをベースに、スマートフォンでも快適にプレイできるようカジュアル化を図ったタイトルだ。プレイヤーの目的は、敵のボスや拠点を打破すること。

バトルには、「ミニ」と呼ばれるユニットを合計7体を編成して挑むことになる。本作に登場するキャラクターは「ウォークラフト」シリーズのキャラクターだが、キャラクターが本人として登場するのではなく、ミニチュアとして登場するという設定。「ミニ」という言葉にはミニチュアという意味と、配下ユニット=ミニオンという意味が込められているようだ。

7体のうち1体はリーダーユニットとなっており、他の一般ユニットとは異なる能力を持っている。たとえば、「ジェイナ・プラウドムーア」であれば、このユニットが召喚されている間、呪文のレベルが3アップするという能力。また「バロン・リーヴェンデア」であれば、一定時間ごとに味方の建物に対しスケルトンを召喚できる。つまりリーダーユニットは、立ち回りに対して大きな影響を与える能力を持っているといえるだろう。このため編成を考える際には、リーダーユニットの能力をどう活かすか?がポイントになる。

編成した7体のユニットを自由に召喚できるのかというと、そうではない。7体の中からランダムに選ばれた4体が手持ちの「ミニ」となり、この手持ちの中から召喚するというかたち。1体召喚すると、その分の「ミニ」が補充される。また、リーダーユニットであっても一般ユニットであっても「ミニ」にはそれぞれコストが設定されており、召喚のためにはコスト分のゴールドが必要だ。ゴールドは、時間経過によって貯まっていく。

召喚した「ミニ」は、基本的に「ミニ」の判断によって行動。オートで移動し、攻撃対象となる敵が範囲内に入れば自動で攻撃する。

「ミニ」は近距離型、遠距離型、飛行型という3タイプが存在。また、飛行型ユニットへの攻撃ができなかったり、あるいは「ミニ」への攻撃はできず建物への攻撃しか行えなかったり…といったかたちで攻撃対象も異なっている。さらに、複数の攻撃対象への範囲攻撃が可能かどうかといった要素も存在。パラメーターの強いユニットが単純に強いというかたちではなく、相性が重要といえる。

ここまでのシステムについては、既存のスマートフォン向けストラテジーにも似たかたちのものがないわけじゃない。ただ本作はここまでのシステムの上に、さらに独自のシステムが用意されている。そのひとつが、ゴールドをめぐる駆け引きだろう。

ゴールドは基本的に時間経過によって貯まっていくが、それ以外の手段で獲得することもできる。マップ上にある金鉱や宝箱に「ミニ」を送り込むことで、ゴールドを手に入れることができるのだ。ただ、採掘用の「ミニ」を召喚する分のゴールドは減ってしまうし、採掘中の無防備な「ミニ」が敵の手にかかってしまうリスクもある。リスクを冒してでもリターンを取るか、それとも無難に攻めるか…という駆け引きがおもしろい。

また、ルート選択の駆け引きも本作ならではといえる。「ミニ」は、自分の召喚場所から最も近いルートへと自動的に進んでいくため、召喚場所を工夫すれば任意のルートを進ませることが可能だ。本作のステージには、概ね2つ以上のルートが存在。ルートによって金鉱や中間拠点など、どのようなギミックがあるのかが異なっている。より有利な状況を手に入れるためには、どちらのルートを狙うべきか?そして、敵はどんなルートを攻めてくるのか?この駆け引きが非常にアツい。

ちなみに、ギミックの中には「ミニ」に対して移動ルートを指示できる「スイッチ」と呼ばれるものも存在する。指示可能な場所は「スイッチ」のある場所に限られ、さらにはルートを切り替えるという大まかな指示しか行えないものの、敵の裏をかくような立ち回りが行えるため、駆け引き上、重要なギミックといえる。

本作はスマートフォン向けストラテジーとしてお手軽に楽しめるシステムの上に、ゴールドという資源をめぐる駆け引きやルート選択をめぐる駆け引きを追加した。この結果、MOBA的な奥深い駆け引きが実現されている。「ウォークラフトIII」以来のファンである筆者からみても、本作はまぎれもない「ウォークラフト」シリーズ最新作だと思う。

■チュートリアルとしてもパズルとしても楽しいソロモード!駆け引きがアツすぎる対戦モード

スマートフォン向のストラテジーで本作のように対戦モードを備えている場合、対戦モードをメインとしていることが多い。場合によってはソロモードが存在しないこともある。ただ本作は、ソロモードがメインとなっている。ゲーム開始直後プレイ可能なのはソロモードのみで、対戦モードは一定ステージクリアしないとプレイできないのだ。

ゲーム開始直後に対戦モードがプレイできないのは、ソロモードがチュートリアルとして用意されているからでは?…そう思った人もいるだろう。そして確かに、本作のソロモードはチュートリアル的な機能を兼ねており、操作方法やルールはもちろん、各「ミニ」の機能や立ち回りまで学習できるものになっている。ただ本作のソロモードは、決してチュートリアルに留まる内容ではない。

ソロモードでは、各ステージごとにテーマのようなものが存在している。たとえば、「敵は数で攻めることを重視して大量のミニを召喚する」だとか、「敵は飛行型のユニットを中心に召喚する」だとかいった具合。前者のテーマに対しては、範囲攻撃型の「ミニ」が必要となるし、後者のテーマに対しては飛行型ユニットを対象にした「ミニ」が必要となるだろう。

つまり本作のソロモードは、各ステージに応じた編成と立ち回りが要求されるものになっている。これがおもしろい。テーマという問題に対し、解となる編成と立ち回りを考えるという点で、詰将棋やパズルに似た楽しさがある。ソロモード単体で、思考型ゲームとして成立しているのだ。

一方、対戦モードはソロモードと違い、相手プレイヤーがどんな編成なのかは当然わからない。このため、「問題に対して解を考える」という意味での知的興奮はない。だがその代わりに、駆け引きがある。しかもその駆け引きが深い。単純に相性のよいユニットを呼び出せばよいというのではなく、ゴールド獲得やルート選択を絡めることで裏をかくことができるからだ。このため、非常にアツい対戦が味わえる。

お手軽なのに奥が深い…本作は、この言葉を体現した一作といっていいだろう。ストーリー性があるわけではないので、これまで「ウォークラフト」を知らなかったという人であっても、楽しさが損なわれることはない。安心してプレイして欲しい。一方で「ウォークラフト」ファンであれば、お馴染みのキャラクターがどう表現されているかという点も含めて楽しめるだろう。こちらも是非プレイして欲しい。新規プレイヤーにも、長年のファンにも、どちらにもオススメできる一作だ。

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