宮下知事「安定財源が必要」/核燃税引き上げ

核燃税について記者団の取材に応じる宮下知事=20日、県庁

 青森県が原子力事業者に課す核燃料物質等取扱税(核燃税)の引き上げを巡り、宮下宗一郎知事は20日、県庁で記者団に、所得向上、子育て、教育など新県政下で推進する主要テーマを列挙した上で、「下支えには安定した財源が必要。(増収は)本県が抱える事情を本質的に解決するための財源」と強調した。従来は、避難路の整備など原子力施設の立地に起因する「財政需要」に基づいて税額案を算定。宮下知事はその建前を取り払い、過去最大の核燃税収を幅広い政策に充当する考えを示した形だ。

 核燃税は県内の原子力施設で取り扱う使用済み核燃料などを対象に、おおむね5年ごとに税率を更新する。現行税制(2019~23年度)の税収は5年分で約976億円(想定額)。一方、県が20日公表した新たな5年分の税率案(24~28年度)では約1255億円と大幅な増収を見込む。

 交渉時に事業者へ示す財政需要が積算の根拠。使途を定めない「法定外普通税」ではあるが、避難路や避難場所の整備、環境放射線の測定など原子力施設の立地にちなんだ項目、産業振興を柱とする。一方で宮下知事は、自ら旗を振る分野にも言及しつつ、「所得が低く平均寿命が短く、社会的なインフラが他県に劣っているといった本県の事情」の解決に充当すると説明した。

 核燃税は電気事業者が拠出するため、県は電気料金を支払う国民負担を試算。宮下知事は、1キロワット時当たりの平均単価30円超のうち、税額分は0.05円を下回ると強調した。

 現行の核燃税収は年額190億~200億円で推移。新たな税額案は年額250億円程度に膨らみ、22年度ベースで試算すれば県税全体の17%に上る。「核燃マネー」は法人事業税に匹敵する規模となる見通し。

 関係者の話を総合すると、県当局は核燃料サイクル施設への課税に向け、大手電力で構成する電気事業連合会と交渉。従来は1年近く時間をかけて交渉に当たるが、今回は知事選と重なったため、本格的な交渉開始は6月末の宮下知事就任後にずれ込んだ。

 短期間での交渉を余儀なくされた一方、今夏の時点で1250億円規模を前提に調整を進めており、最終的に県の意向に沿った結果となった。県側関係者の一人は、就任間もない宮下知事との関係を築くためにも「電事連が『無理』とは言わないはず」との見方を示していた。

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