えびす様おもてなし 宇奈月・田の神行事「おおべっさま迎え」

御膳を用意し、えびす様をもてなす柳原さん=黒部市宇奈月町下立

 黒部市宇奈月町下立(おりたて)地区で20日、伝統の信仰行事「おおべっさま迎え」が行われ、住民が田の神や出稼ぎの神とされるえびす様を自宅でもてなした。年明けの1月20日までの2カ月間、家に滞在してもらい、同日早朝に送り出す。

 市教委などによると、「おおべっさま」は「おえびす様」がなまった言葉で、1983(昭和58)年、越中の田の神行事として国の記録作成措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択された。

 ユネスコ無形文化遺産に登録されている奥能登の「あえのこと」と類似した行事で、魚津市、入善町などにも伝わり、下立地区は継承している家が多いという。

 長年行事を続けている柳原欣一さん(68)方では20日夕、柳原さんが妻恵美子さん(68)とともに玄関で「長い間、ご苦労さまでした」と出迎え、一休みしてもらった後、風呂に案内、神棚下に赤い座布団を敷き、煮しめや腹合わせのタイ、二股大根などの御膳を供えた。

 頃合いをみて、御膳前に案内し、「おかげさまでお米も畑の野菜もたくさん収穫させてもらいました」と会釈し、酒を振る舞った。

 柳原さんは「時代や生活様式に合わせて形が変わっても、長く続けていくことが大事だ」と継承の思いを新たにした。

 下立地区でも行う家は減っているが、小豆飯だけは供えるなど簡略化した形を含め、続けている家が十数軒程度はあるとみられる。

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