怒り不安のみこみ再開 金沢競馬消灯3人落馬の翌日

会合を終え、退室する調教師や騎手=金沢市の石川県競馬事業局

  ●「生活のため」「つぶれてしまう」騎手ら了解 県、手動操作を約束

19日夕、金沢競馬のレース中に走路照明が突然消えたアクシデントを受け、石川県競馬事業局は20日、消灯方法をタイマーから手動に切り替える再発防止策を講じた上でレースを再開した。調教師や騎手との協議では「けが人が出たんだぞ」などと怒号が飛び交い、早期の本場開催に否定的な意見もあったが、最終的には「生活のためにやるしかない」との声が大勢を占め、怒りと不安をのみこんでの再スタートとなった。

  ●関係者に補償

 19日は、第8レース中に走路照明が消え、騎手3人が落馬し、2人が救急搬送された。転倒した馬1頭は安楽死処分となった。

 20日午前、県競馬事業局は調教師や騎手、馬主ら約40人を集めて非公開の話し合いを行った。出席者によると、冒頭、臼井晴基局長が謝罪し、全てのレース終了後に行うべき消灯タイマーの設定作業をレース中に行ったこと、「19時10分」とすべき設定時刻を誤って「17時10分」としたことが原因だったと説明。レース関係者への補償を行う方針も示した。

 これに対し、一部の出席者は「照明を消す時に安全確認をしていなかったのか」「命に関わる問題だ」と声を荒らげた。事業局側は再発防止策として、安全を確認して担当者2人が手動で照明を落とす方法に変更するとしたが、レース再開のタイミングについては「きょう(20日)本当にやるのか」と慎重な声も聞かれたという。

 ただ、別の出席者から「前向きに行こう」「生活がかかっている」と再開を望む発言が出ると、「やらないと競馬場がつぶれてしまう」と同意する意見が広がり、最終的には拍手で予定通りレースを開催することに決まった。

 約30分間の協議後、調騎会騎手部門会長の青柳正義騎手は北國新聞社の取材に「目の前が突然真っ暗となり、怖かった」と19日のレースを振り返り、「人為的なミスであり、再発防止はできるはずだ。徹底してほしい」と強調した。

 この日、埼玉県から訪れた競馬ファンの30代女性は「(19日の)映像を見てびっくりした。再開しても働く人や競走馬が大丈夫なのかと心配になる」と話した。

  ●搬送の騎手は治療中

 県競馬事業局によると、搬送された騎手は現在も入院して治療を受けている。また、19日の第8レースの審議内容が一時、場内スピーカーで流れたのは、マイクの切り忘れが原因という。

 

  ●3連単501万円 史上4番目の高配当

 再開された20日の第7レースでは、3連単の払戻金が史上4番目となる501万7500円の高額配当が出た。今年の配当では10月10日の3連単580万8700円に次いで2番目に高い。前日、消灯アクシデントに揺れたファンからは「いろんなことが起きる」と驚きの声が上がった。

 レースは11頭立てで行われ、単勝11番人気のライムワード、10番人気のリコーランカスター、6番人気のカフェメモワールの順に1~3着に入った。的中は1票だった。同レースで枠単は的中がなく、70円が返還される「特払い」となった。

 金沢競馬の最高額は2021年3月15日の3連単で863万7940円。

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