宮田莉朋、2024年FIA F2参戦チームはどこか。まさに今、佳境を迎えているシート争いと候補の10チーム

 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は11月20日、2024年のWEC世界耐久選手権とWRC世界ラリー選手権の参戦体制を発表。そのなかでTGR WECチャレンジドライバーの宮田莉朋が、WECチームのリザーブドライバーに就任しつつ、F1登竜門として知られているFIA F2とヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)に参戦することが明らかにされた。

 なかでも注目は、全戦がF1のサポートイベントとして、グランプリウイークに開催されるFIA F2への参戦だろう。かつてGP2という名称で開催されていた時代には、F1前の中嶋一貴、小林可夢偉も参戦。近年では角田裕毅、そして2023年シーズンはホンダ&レッドブル育成の岩佐歩夢が参戦するなど、FIA F2はF1を目指す若手ドライバーが集結するシリーズとして知られている。

 FIA F2はスーパーフォーミュラと同じイタリアメーカーのダラーラ製シャシーに、アルピーヌF1(ルノーF1時代より)とも関係の深いフランスのメカクローム製3.4リッターV6シングルターボエンジン、そしてイタリアのピレリタイヤのワンメイクで競われている。ワンメイクカテゴリーではあるが、ドライバーの実力以外に、エンジニアのセットアップ能力やピットストップの速さ、メンテナンス能力など、チームごとの戦力差がレース結果に大きく影響するシリーズともなっている。

 また、参戦しているチームもイギリス、フランス、スペインなどヨーロッパ各地に点在しており、所属するチームの国の特徴など、日本から参戦するドライバーにとっては文化的な要素やマッチングなどもパフォーマンスに影響してくる。

2024年シーズンよりFIA F2に投入される新型車両

 宮田がFIA F2へのシリーズ参戦を発表した11月20日時点で、2024年のF2のシートは22席中17席が空いている状況で、ストーブリーグはまさに今、佳境を迎えている状況だ。

 その中でもすでに決まっているチーム、ドライバーとしては、まず2023年第13戦モンツァ終了時点でチームランキング5位につけるMPモータースポーツが、今季レッドブル育成メンバーのデニス・ハウガーとウイリアムズF1育成のフランコ・コラピントの2024年起用を早々に発表しており、宮田にとっての残りの候補は全11チーム中10チームとなる。

 F2トップチームのひとつであるプレマ・レーシングはメルセデス育成でフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FRECA)王者に輝いたアンドレア・キミ・アントネッリを起用。フル参戦はわずか2年のシングルシーターキャリアで5つのタイトルを獲得しているアントネッリはFIA F3に参戦することなく、飛び級でFIA F2参戦を決めたことで大きな話題となった。

2024年FIA F2に参戦するメルセデス育成のアンドレア・キミ・アントネッリ(プレマ・レーシング)

 一方、ドイツ国籍のPHMレーシングはジョシュア・デュルクセンの起用を発表。デュルクセンはFRECAをランキング19位で終えたが、アントネッリと同じくこちらもFIA F3を経ずFIA F2へのステップアップを決めている。そしてARTグランプリはウイリアムズ育成で、今季FIA F3でランキング2位となったザク・オサリバンを起用を明らかにしている状況だ。

ウイリアムズ・レーシング・アカデミーのザク・オサリバン(左)とフランコ・コラピント

 なお、今季FIA F2参戦ドライバーのうち、アルピーヌ育成でインビクタ・ビルトゥジ・レーシングから参戦しているジャック・ドゥーハンは、2024年はFIA F2には参戦せず、アルピーヌF1のリザーブドライバーとしての仕事に専念することを明らかにしている。

 また、FIA F2ではドライバーズタイトル獲得ドライバーは、翌シーズンも継続して参戦することを認めておらず、第13戦モンツァ終了時点で今季タイトルの可能性を残すランキング首位のテオ・プルシェール(ARTグランプリ/ザウバー育成)、ランキング2位のフレデリック・ベスティ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)、そしてランキング3位の岩佐歩夢(ダムス/ホンダ&レッドブル育成)のうち、チャンピオンとなったドライバーに関してもFIA F2卒業となる。

 そのほかのシートに関しては11月20日時点で正式発表はされていない。ただ、FIA F2最終戦終了後の11月29日~12月1日には、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットでFIA F2ポストシーズンテストが開催され、宮田もいずれかのチームからの参加を予定している。テストに参加したドライバーは、このポストシーズンテストで搭乗したチームからシーズンエントリーを果たすケースも少なくはないため、来季のエントリー状況を占うためにも、近日明らかにされるだろうポストシーズンテストのエントリー状況に注視しておきたいところだ。

 トヨタ/GR関係者のコメントから、来季の宮田は勝てるチームのひとつに所属することは間違いない。今年、勝利を挙げたチームは11チーム中PHMレーシングを除く10チームで、そのなかでも常に勝利を狙えるトップチームとしてはプレマ・レーシング、ARTグランプリ、ロダン・カーリン、そしてダムスの4チームか。

 2023年のスーパーGT GT500クラス、全日本スーパーフォーミュラ選手権の王者が、F1直下のカテゴリーでどのような走りを見せてくれるのだろうか。ELMSでの走りとともに、2024年シーズンも宮田の活動からは目が離せない。

■2024年FIA F2暫定エントリー

(11月20日時点正式発表済みのみ表記)

Driver Team Program(2023)

ザク・オサリバン ARTグランプリ ウイリアムズ育成

アンドレア・キミ・アントネッリ プレマ・レーシング メルセデス育成

デニス・ハウガー MPモータースポーツ レッドブル育成

フランコ・コラピント MPモータースポーツ ウイリアムズ育成

ジョシュア・デュルクセン PHMレーシング –

2023スーパーフォーミュラ第9戦鈴鹿 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
2023スーパーGT第8戦もてぎ au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)
2007年GP2第2戦バルセロナ 中嶋一貴(ダムス)
2008年GP2アジアシリーズ第5戦/第6戦セパン 小林可夢偉(ダムス)

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