長崎修学旅行 今年も「盛況」 学習ニーズの変化に対応 県内高校の行き先は関東回帰

修学旅行生でにぎわう平和祈念像前=長崎市松山町、平和公園

 修学旅行シーズンがピークを迎え、長崎市内は全国から来る児童生徒でにぎわっている。新型コロナウイルス禍で一時激減したが、昨年復調した「盛況」ぶりは今年も継続。ただ学習ニーズの変化もあり、受け入れ側は対応を迫られている。一方、長崎県内高校の修学旅行先は、近場の九州圏から関東に戻りつつある。
 今月上旬のある日、長崎市南山手地区の大浦天主堂やグラバー園に続く坂道は、土産袋を手にした児童生徒であふれていた。一帯の土産店でつくる同地区観光推進協議会の山下祐之介会長は「だいぶ戻ってきた。協議会で一体となって、さらに呼び込みたい」と話す。

長崎県への修学旅行者数の推移

 県観光振興課によると、コロナの渦中にあった2020年、県内への修学旅行者数は約19万人と前年の半減以下に落ち込んだ。昨年は約48万人と過去10年間で最多レベルにまで回復し、今年も「同じくらい盛況」という。日本修学旅行協会によると、本県は20、21両年度、高校生の行く先として全国1位だった。
 ただ、現在の好調ぶりを県観光連盟の担当者は、かつて人気だった海外を感染対策のため控える「一時的なもの」と冷静に受け止めている。そのため今後はリピート率向上が鍵を握るとみて、訪問実績のある学校の誘致に力を入れる。
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 県内修学旅行生の約6割は長崎市に宿泊滞在する。主要なコンテンツは、被爆遺構・施設の見学や被爆体験講話など「平和学習」だ。ところが近年、学習指導要領改定で児童生徒の主体的な学びを促す「アクティブ・ラーニング」や持続可能な開発目標(SDGs)が重要視されるようになった。
 そこで長崎国際観光コンベンション協会(DMOナガサキ)は「選ばれる長崎」を目指して昨年から、新たな中高生向け修学旅行用プログラムとして「長崎SDGs平和ワークショップ」を企画。生徒は「平和と公正をすべての人に」などのゴールを目指す取り組みを考え、グループで議論し発表する。事前に研修を受けたホテルスタッフがサポートすることも。本年度は7校、うち2校は昨年に続いて実施予定という。DMOナガサキの古賀典明事業部長は「ガイドの高齢化も進んでいる。持続可能な平和学習を打ち出していきたい」と話す。
 長崎市に次いで修学旅行宿泊者数が多かったのは佐世保市で、昨年も両市合わせて本県の9割近くを占めた。周辺や離島への誘致も課題となっている。
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 一方、県内公立高の修学旅行は、本年度から徐々にコロナ禍前の状況に戻り始めている。
 県教委高校教育課によると、21年度は全校の約2割が中止や延期とし、実施校も約8割が行き先を九州に切り替えた。昨年度からは、もともと人気だった東京や千葉、神奈川に行く高校が少しずつ増加。本年度は現段階で中止した学校(予定も含む)はなく、シンガポールやベトナムなど海外を選んだ学校も複数ある。
 全国の動きと同様、SDGsを学習要素に採り入れる高校が増加。企業を訪問し社会貢献活動などを学ぶプログラムもある。

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