フェラーリ、サインツ車の損害の補填についてF1ラスベガスGP関係者と非公開で協議へ。黄旗&赤旗の提示にも疑問

 フェラーリのチーム代表を務めるフレデリック・バスールは、カルロス・サインツのマシンが負った損害の補填について、F1ラスベガスGPの関係者たちと”非公開で協議”すると述べた。

 先週木曜日に行われたF1第22戦ラスベガスGPのフリー走行1回目の開始直後、セクター3を通過中だったサインツのマシンが、緩んだウォーターバルブカバーと衝突した。マシンの莫大なパワーによりバルブカバーのコンクリート製フレームが跳ね上がり、シャシーが致命的な損傷を負っただけでなく、パワーユニット、コントロールエレクトロニクス、エナジーストアにも重大な損害を与えた。

2023年F1第22戦ラスベガスGP木曜 破損したマンホールカバー周辺

 このインシデントによりFP1は中止となり、コース全体の入念な点検が行われた。FP2は予定より2時間半遅れで実施されることになったが、グランドスタンドへの観客の立ち入りが許可されなかったため、3万5000人の1日券保有者の代理人がラスベガスGPの主催者を相手取った集団訴訟を起こす事態となった。

 チームメイトのシャルル・ルクレールに次いで2番手で予選を通過したサインツだったが、規定数を超えるエナジーストアを使用したという理由で10グリッド降格ペナルティを科されたため、フェラーリはさらに追い打ちをかけられた。不可抗力の場合にスチュワードが制裁を免除できる規定が、スポーティングレギュレーションにないためだ。バスールはこうした状況に対して怒りを露わにし、ラスベガスGPの主催者であるF1に対して、ウォーターバルブのインシデントによりチームが被った費用の補填を求める予定だ。

「これは今回の件の関係者たちと私による非公開の協議になるだろう」とバスールは述べた。

 こうした補填には先例がある。2017年のマレーシアGPで、ハースのロマン・グロージャンのマシンに緩んでいた排水口のカバーが当たり、重大な損害を与えた。ハースとマレーシアGPの主催者は協議し、最終的には金銭的和解に達した。フェラーリが今回被った競技面での不利もさることながら、財政面でも予算制限に大きな影響を及ぼすことが考えられる。今週末にアブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行われる今シーズン最終戦に向けて、予備のシャシーを用意しアブダビへ輸送する費用もこれに含まれる。

「予算やコストキャップに、クラッシュを除いて確保してある分などない」とバスールは述べた。

「多大な費用が余分にかかることは間違いない。配線、ギヤボックス、バッテリーが損傷し、エンジンが完全に壊れた。財政面、競技面、さらにはスペアパーツの在庫にまで多大な影響が出ている。予算面ではかなり厳しくなってくるだろう」

「話し合いを行うつもりだ。そこでどういう結論が出るかはまた別の問題だ」

2023年F1第22戦ラスベガスGP木曜 マンホールカバーによりダメージを負ったカルロス・サインツ(フェラーリ)のマシン

 バスールはまた、先週木曜日のインシデントに対するF1の対応についても話をするつもりだと述べた。マーシャルはコース上に緩んだウォーターバルブカバーがあることを発見した時点でイエローフラッグを出したが、レッドフラッグに切り替えたのは1分も経ってからで、サインツがバルブカバーに衝突した後のことだった。

「インシデントが起きたときの状況も話し合わなくてはならない」とバスールは主張した。

「カバーが外れたというだけでなく、私に言わせれば、イエローフラッグからレッドフラッグまで1分も間があったからだ」

「彼らがイエローフラッグを出したのは、コース上で何かを見たからだろう。そこから1分もかかって、ようやくレッドフラッグを出した。時間がかかりすぎだと思う」

「この件で私が一番問題にしているのは、最初のイエローフラッグが出されたということは、何かを見たということだ。何かを予期してイエローフラッグを出すことはない。つまり、オフィシャルはイエローフラッグを出した。レースコントロールを通じて私のボードにもイエローフラッグが表示された。彼らは何かを発見したということだ。そして彼らはレッドフラッグを出すまで1分もかかっている。時速340kmで走るストレートに金属部品があるというのにだ」

2023年F1第22戦ラスベガスGP フレデリック・バスール代表(フェラーリ)

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