クマの農作物被害前年の6倍に 青森県

 青森県は21日、本年度のツキノワグマによる県内農作物被害が9月末時点で890万円となり、前年同期の約6倍に上っていることを明らかにした。このうちリンゴなどの果樹が735万円で8割以上を占めるという。県議会農林水産常任委員会で大澤敏彦委員(自民)の質問に答えた。

 本年度は個体数の増加などを背景に全国でクマの出没が相次いでいる。県内の被害状況は各市町村の報告に基づく速報値で、9月末時点の被害面積は約4ヘクタールと前年同期と比べ3倍ほど。被害金額、面積ともに前年度の年間実績を既に2倍近く上回っている。

 被害面積は中南地域が1.5ヘクタール、三八1.3ヘクタール、下北1ヘクタールなどとなっているが、被害金額はリンゴの被害が大きい中南が561万円で約6割を占めた。三八、下北は各102万円。被害額を品目別にみると、果樹の他は野菜が90万円、飼料作物が38万円など。

 県食の安全・安心推進課によると、県は電気柵の設置など各市町村の被害防止策を支援。捕獲活動の省力化・効率化に向け、捕獲わなの作動をリアルタイムで通知するICT機器の貸し付けも行っている。

 また、野生鳥獣が農地や人里に近づきにくくするため、茂みを刈り払って山と里の間に「緩衝帯」を設置する計画を県内10市町村が作成しており、本年度は佐井村が緩衝帯を設けた。5市町村は農業者に自主的な設置を指導しているという。

 中村義人課長は「本年度はツキノワグマによる農作業中の人身被害も発生している。農作物の被害防止に加え、例年以上に作業者の安全確保について注意喚起を行っている」と話した。

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