グッドルーザー(4) バレーボール男子 大分工業 エースの涙 【大分県】

第76回全日本バレーボール高校選手権大会(春の高校バレー)県代表決定戦

11月12日 サイクルショップコダマ大洲アリーナ

男子決勝

大分工業0(23-25、24-26、11-25)3大分南

エース不在は痛手だった―。春の高校バレー県代表決定戦、大分工業はエース抜きで勝ち上がってきた。決勝では鍛え上げた守備と的を絞らせない攻撃で自分たちの流れをつくった。しかし、セット最終盤の勝負どころでポイントが取れず、第1、2セットとも競り負ける。第3セットでは集中力が切れてストレート負けを喫した。キャプテンの田中奏聖(3年)は「全てを出し切った。これが今の自分たちの力」と言い訳はしなかった。

チームに激震が走ったのは6月の県高校総体の決勝。試合中に小野太聖(3年)が左膝前十字靱(じん)帯断裂の大けがを負い、エースを失ったチームは敗戦した。「チーム得点の9割を決めていたエース不在の影響は大きかった」(江崎裕之監督)。根本的な組織変更を強いられたが、2年生が力を付け、複数の選手が得点する多彩な攻撃スタイルを目指した。これまでのベースにあった守備力とかみ合うまで時間はかかったが、「小野を春高に連れて行こう!」とチームがまとまり、下馬評を覆し、決勝の舞台に立った。

キャプテンとしてチームを引っ張った田中奏聖

膝を固定するサポーターを付けた小野はベンチにいた。試合前の練習ではボール拾いをし、タイムアウトやセット間の休憩では、水を差し出し、後輩にアドバイスを送るなどサポート役に徹した。「勝ってくれる」と信じて大きな声で鼓舞した。願い届かず、あと一歩のところで優勝を逃した瞬間、「みんな、よく頑張った」と肩を落とす仲間を迎えた。込み上げる感情を抑え、チームを引っ張ってくれた同級生一人一人に感謝の言葉を掛けた。

気丈に振る舞う小野に「一番悔しかったよね」と声を掛けた。その瞬間、これまでこらえていた感情があふれ出した。「みんなが苦しいときに何もできない悔しさがあった。けがさえなければ。自分がコートに立って入れば。何度も思った。悔しい。本当に悔しい。なんで俺はけがなんかしてしまったんだ」。チームに貢献できなかった自らのふがいなさを責めた。何度も「悔しい」と発した言葉に、エースとしての責務を果たせなかった思いが表れていた。来年2月にはサポーターを外し、練習ができるようになるという。「高校最後の半年間は悔しさしかない。大学ではこの悔しさをバネにしたい」と次のステージでの活躍を誓った。

ベンチからチームを盛り上げた小野太聖(右から3番目)

(柚野真也)

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