迫る津波…シミュレーションで津波体験取材 “わずか数十センチ”の脅威

地震への備えも常に必要ですが、地震が起きた際に警戒が必要なのが津波です。先月は伊豆諸島の鳥島近海を震源とする地震により、2度に渡り津波注意報が発表される事態となりました。実際の津波はどれほどの威力があるのか…津波のメカニズムを研究する施設で、津波のシミュレーションを体験してきました。

今、この瞬間にも、日本を襲うかもしれない津波。その実際の威力とは?津波の脅威を知るため、文京区にある中央大学を訪ねました。

有川教授は約20年にわたり、津波や高潮など、沿岸災害の研究を行っています。

有川教授:「本当に小さな津波であったとしても、非常に大きな力がかかる可能性があるというところが、津波の恐ろしさだと思います」

有川教授の監修のもと、津波を疑似体験させてもらいます。

記者:「津波って実際には見たことも体験したことがないので緊張します」

こちらの装置は、数千リットルの水を使って津波を再現できるものです。まず高さ30cmの津波は、膝下の高さにもかかわらず、ロープをつかむ体ごと押し流され、その場にとどまることはできませんでした。

記者:「正直ちょっと30cmの津波、甘く見ていましたね。最初に水が当たったときの衝撃で、一気に数m押し流されてしまいました。膝から下に水というよりは、大きな塊が向かってくるようなイメージでした」

"甘く見ていた”30cmは、津波注意報が発表される高さです。気象庁から発表される津波警報や注意報は、予測される津波の高さを基準に3段階に分かれていて、20cm以上1m以下の津波は注意報に分類されます。30cmの津波では小型船が転覆する恐れもあるという警戒が必要な高さです。

有川教授:「風波などとの違いは、継続して流れてくると50キロ程度の力がかかっていると思いますので、場合によっては数分間流されていますから、自分が想像もしない位置に行ったり沖に出されてしまったりということも、場合によってはあるかもしれません」

先月、伊豆諸島の鳥島近海を震源とする地震により、2度にわたり津波注意報が発表されました。この時、最大波として観測された津波の高さは八丈島で60cm、三宅島や神津島で50cmでした。

では、高さ50cmから60cmの津波では、30cmと比べてどれほど威力が違うのでしょうか?…一瞬で、ロープを必死につかむ体ごと波に飲まれてしまいました。

記者:「まったく何が起きたのか分かりませんでした。水が見えたときには自分自分自身は倒れていて、30cmの時にはまだ踏ん張って前傾姿勢になることはできたのですが、50~60cmともなるともう気がついたら倒れているという感じで、津波にあってしまったら助かるのは難しいんだなと実感しました。いまだに手が震えていて、かなり恐怖が大きかったですね」

有川教授は、「東京で津波は問題ない」という意識が一番危ないと警鐘を鳴らしていて、危険性として、場合によっては何かしらの損傷がある堤防が津波をきっかけに崩壊してしまうことや、マンホールから水が溢れてくるなど、想定を超えてくる恐れがあるのが震災だと話していました。

そしてこちらは東京都が去年公表した、マグニチュード9クラスの南海トラフ地震など、都内への影響が大きい震災が発生した場合の、津波の被害想定です。区部で約2mから2.6m程度、島しょ地域では高いところで28mや27mと、30m近い高さの津波が襲うと想定されています。防潮堤の整備なども進められているため、区部では津波による人的被害は想定されていませんが、島しょ地域では1200あまりの建物に被害が出て1000人近い死者も出ると想定されています。

© TOKYO MX