【新NISA】でどれくらい投資をする? 1万人のデータから浮かび上がるスタンス

まもなく新NISAが始まります。フィデリティ・インスティテュートでは、2010年より「ビジネスパーソン1万人アンケート」(以下、「1万人アンケート」)をほぼ毎年実施しています。2023年の調査では、新NISAについても詳しく聞いており、今回はその内容をご紹介します。新NISA活用にあたって、ぜひ参考にしてください。

フィデリティは2010年より、日本全国の会社員と公務員の資産形成や退職準備に関する動向の調査を続けており、今回で10回目。2023年の調査は6月30日~7月7日にインターネットを通じて10,854人を対象に実施。


現行NISAの利用率は約4割

まずは、現行NISAの利用率を見てみましょう。一般NISA、つみたてNISA をあわせた利用者は3,933人で、調査対象者の4割弱でした。男女別、年収別、年代別の利用率は図表1のとおりです。

図表1 現行NISAの利用率

男性は一般NISA、女性はつみたてNISAの利用者が多いことがわかります。年収が増えるにつれ、いずれのNISAも利用率は高くなります。一方、年齢が高くなるにつれ、一般NISAは利用率が高くなっていきますが、つみたてNISAは若い人に人気があることがわかります。

投資額も見てみましょう。一般NISA利用者の年間投資額の平均値は64万6,622円、つみたてNISAは24万8,396円でした。小集団ごとの平均値は図表2のようになっています。皆さんの投資額はこれより大きいですか、小さいですか? 比べてみてください。

図表2 現行NISAの平均投資額

新NISAは半数以上の人が知っている

新NISAに話を移します。図表3をご覧ください。新NISAのことを知っている人は全体で54%と、かなり高い認知度でした。男性では57%、女性は48%が知っていると回答しています。そして、収入が高くなると、認知度は格段に上がっていきます。一方、年代による差はそれほど大きくなく、Z世代でも48%が知っていました。

図表3 新NISAの認知度

ただし、現行NISAを利用していない人に限ると、新NISAを知っている人は34%と低くなりました。

一般NISAで上限まで投資している人の半数が新NISAを上限枠まで利用する意向

1万人アンケートでは、新NISAでどれくらい投資する予定かを聞いています。それを現行NISAの投資額と比較した分析も実施しました。現在の投資額をそのまま回答する人が多かったものの、約4分の1の人は新NISAで投資額を増やす予定があるという結果になりました。

なかでも、一般NISAで上限枠(120万円)まで投資している人の約半数、つみたてNISA上限枠(40万円)まで投資している人の20%が、新NISAでは投資上限枠の360万円まで投資する予定と回答しています(図表4)。

図表4 一般・つみたてNISA上限利用者は、新NISAでいくら投資予定か

賃上げもNISAへの投資額を増やすきっかけになっています。図表5は、新NISAで投資額を増やす予定がある人について、2023年に賃上げがあったか、なかったかを調べた結果です。20~30代では賃金があがったとする人が多く、昇給が投資額増加のきっかけになっていることがわかります。

図表5 投資額増と賃上げとの関係 (グラフ縦軸は人数)

現行NISAを利用していない人も新NISAをきっかけに投資へ

一方、現行NISAを利用していない人は6,921人いました。この人たちの中で「新NISAを利用する予定はない」とはっきり回答した人は38%でした。逆にいうと、残りの6割は新NISAの利用者となる可能性があるということです。

現在の経済や社会環境は投資を後押しする方向に働いていると感じます。図表6は「今年投資を始めた」人に、その理由を回答してもらった結果です。最も多かった回答が「インフレが進み、預貯金だけでは資産が目減りしてしまうと思うから」です。また、SNSやネットニュースを通じて資産運用関連の情報を入手しやすい世の中になったことで、「投資に関して知識・情報が増えたから」も2位と多いです。

第3位は「世の中が投資をする雰囲気になってきたから/友人・知人が始めたから」という回答ですが、新NISAの登場でこの動きは一段と強まるでしょう。身近な人が新NISAで投資を始めたとなれば、自分も投資を始めようという人が増え、それがまた周囲に影響を与えるといった形で、玉突き現象が起こっていく予感がします。

図表6 投資を始めた人の理由


新NISAを通じて、すでに投資をしている人は投資額を今より増やし、投資をしてこなかった人は新たに投資をするようになる、といった変化が起こるでしょう。これを山にたとえると、山頂が高くなるとともに、すそ野も大きく広がっていくといったイメージです。新NISAによって、投資総量は間違いなく大きくなり、「貯蓄から投資へ」は確実に進むと思います。

こうしたデータも参考にして、新NISAをどう活用していくか、戦略を練っていかれるといいでしょう。

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