「瀬戸内」の魅力を発信 故郷でワインを醸造

柑橘類の一大産地・瀬戸内では、古くからブドウの栽培も盛んでした。取材したのは、担い手不足に陥っている「農業」の価値をワインの生産で高めようと奔走する、醸造所の経営者です。

潮風に吹かれながら味わう至福の一杯。11月中旬、瀬戸内で醸造したワインを楽しむ催しが三原市で開かれました。企画者の一人・太田さんは、会場となったこのワイナリーを率います。

■瀬戸内醸造所 太田祐也 社長

「瀬戸内はぶどうの産地、ワイン もおいしいんだぞということを どんどん認知させて行きたいと 思ってやっているイベントです」

2020年にオープンした瀬戸内醸造所は、地元で採れた果実でワインを作り、2023年、海外の品評会に入賞するなどしています。地元・三原の「食」のブランド化など、地方創生に携わる太田さんの思いは、ワインにとどまりません。

■瀬戸内醸造所 太田祐也 社長

「ワインを作るけれども、最終ゴール地点というのは、農業の素晴らしさ、瀬戸内の農業の素晴らしさを伝えていく ところなので」

向かったのは、9月に収穫を終えたばかりの竹原市のブドウ畑。

■瀬戸内醸造所 太田祐也 社長

「ここが元々耕作放棄地だった場所を使って大体1.5ヘクタールぐらい耕している」

江戸時代製塩業で栄えた竹原は、古くから塩田の跡地を利用したブドウ作りが盛んです。しかし、担い手不足が拡大。耕作放棄地が増えるばかりの現実を前に、再生を決意します。

■瀬戸内醸造所 太田祐也 社長

「塩田の跡地というメリットを最大限に引き出せるミネラル感のある塩味という表現をしますが、そういうお酒が出来るのがこの畑の特徴です。」

ここを借りたのは2020年。畑を耕すとことから始めました。しかし、苗木を植えた直後に大雨に見舞われるなど、多くの試練も経験しました。そこで力を借りたのが、三原で40年間ブドウを栽培してきた大番さんです。畑づくりから指導を受け、収穫に漕ぎ着けました。太田さんの新たな取り組みに、期待を寄せます。

■大番農園 大番尉志さん

「ものすごく私たちもうれしいこれから頑張ってみようというような力が湧いてくる

そのブドウは今、ワイナリーで醸造を終え、2024年春の出荷の時を静かに待ちます。

■瀬戸内醸造所 太田祐也 社長

「自社畑で自分で一からユンボを 使って畑を戻して、かたちにし たのは思い入れの深い畑なので皆さんと飲むのが大変楽しみ」

ワイナリーに併設したレストランで開かれた盛大な催し。瀬戸内にある3つの醸造所が共同で企画しました。瀬戸田にある人気旅館のシェフが、瀬戸内の食材を使ったワインに合う料理を振る舞いました。

■来場者

「飲みやすくておいしいこんなところでこんなワインができると思わなかった。」

「日本のワインと瀬戸内の魚とか合うと思います。和食にも合うワイン。」

「三原で葡萄が育てられていうのは初めて知った。ワインにつかってもここまで映えるようなぶどうができるんだというのは、すごい新たな発見。」

食事を提供した瀬戸田の旅館は海外からの客も多く、参加者と交流しました。

■Azumi Setoda 窪田淑 ゼネラルマネージャー

「地場の生産者の方に何か残す取り組みはすばらしいことだと思っていて、まだまだこれから世界中の方に知って頂きたいと思っています。」

■瀬戸内醸造所 太田祐也 社長

「農業こそが、地域の一番の産業だと思っている。今の世代の我々は前の世代から受け継いできているので、これを次の世代にきちっと継承していく、そういうことを引き続き、僕もやっていきたいなと思っています。」

ワインづくりを通して、農業の価値を高め、地元・瀬戸内を活気づける。そんな、ふるさとの持つ魅力を発信する、取り組みは、限りなく広がります。

【2023年11月22日 放送】

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