<インタビュー>J2山形FW宮城天が語るJ1復帰の覚悟!川崎から来たパリ世代期待のアタッカーが山形を昇格PO優勝へと導く

J2モンテディオ山形は今季21勝4分17敗でJ1昇格プレーオフ(PO)圏内の5位に入り、今月25日午後1時に静岡・IAIスタジアム日本平で4位清水エスパルスと対戦する。

POに優勝すれば2015年以来9季ぶりのJ1復帰を目指す山形、今季途中で加入した頼もしいアタッカーが闘志を燃やしている。今季J1川崎フロンターレから期限付き移籍で加入したパリ世代期待のFW宮城天は、優れた得点感覚と並外れたチャンスメイクを見せて加入後7試合3得点1アシストでチームの昇格PO進出に大きく貢献した。

今回Qolyは山形に期限付き移籍した宮城にインタビューを敢行。POへの意気込みやキャリアの展望などを聞いた。

パリ世代期待のアタッカーが山形で活躍

――今季を振り返っていかがでしたか。

フロンターレから長崎にレンタルということで、チームも変わりますし、カテゴリーも下がるので強い気持ちを持って挑んだ1年でした。

思い通りにいかない部分もあって、それでもしっかりやり続けました。

(シーズン途中で)モンテディオに移籍することになりました。ケガを挟みましたけど、しっかりプレーはできていますし、得点関与はまだまだ足りないですけど、しっかりできたと思います。

――山形の期限付き移籍の経緯などを明かせる範囲で教えてください。

経緯は一つしかないですね。メンバーにも入ってなくて、試合に絡めなかった。

自分が移籍しようと思った理由は試合出場時間など、そういう部分です。このまま(長崎に)いてもプレータイムを確保できないなと思ったので、「より求めてくれるところに移籍しないといけない」と思ったことがきっかけです。

――今季は山形でリーグ戦7試合3得点1アシスト。長崎と合計してリーグ戦20試合6得点3アシストと、1試合における得点関与率でいえば優れた数字が出ています。振り返ってこの結果はどう感じていますか。

いや、20試合10得点くらいはいけると思っていたし、試合に出ている感覚でもいけると思っていたんですけど、いかないといけなかった。それは悔しいですし、ケガもありましたからすごく悔しいです。6得点は最低限の数字なのかなと思います。

山形で成長した感覚

これまで川崎でリーグ戦に通算34試合出場したが、先発出場は2シーズンで7試合と満足できるものではなかった。今季は長崎でリーグ戦先発9試合、山形で先発6試合と計15試合に先発で出場できた。J2で武者修行したからこそ、新たにつかんだ感覚や学びがあった。

――山形の雰囲気はいかがでしたか。

自分が来たときは、順位は中間あたりに位置していました。それでも戦い方が安定というかプレースタイルは変えずに、ずっと山形のプレースタイルがあって、その中で勝ち負けを繰り返していました。

あとは自分が入ってなにかが変わるか、そういうきっかけがありさえすれば、PO圏内に入ることが可能だと思いました。僕が来たときは残り14試合だったので、自動昇格争いもできるかなと思っていました。自分のケガもあってそれは叶わなかったですが、最終節までの自動昇格圏内との勝点差も考えれば、自分がいたらいい戦いはできてたな思うので、そういう部分では悔しかったですね。

――今季山形で過ごして成長した部分を教えてください。

山形だけじゃなくて、数は少ないですけど、長崎でもスタメンで出る日はあった。川崎のときはスタメンで出る機会が少なすぎて、自分がどこまでできるのか、スタメンで出るときの自分のプレーの改善部分が分からなかった。

フロンターレの時は大外に張ってからしかけることがほとんどで、ゴールに近いエリアや中寄りで受ける場面が少なくて、自分としてはそれに少し違和感というか、やりづらさを感じていました。山形でゴールに近い所でプレーすることによって、自分の特徴は大外に張ってしかけることもそうですけど、「ゴールの近くでプレーすることなんだな」と改めて気づくことができました。

6得点しか決めてないですけど、決められそうという感覚はすごく強まった。そういう部分ではスタメンで出ることの大事さを知りましたし、よりスタメンで出たいなというものがあります。スタメンで出る部分での成長はいろいろと感じていますね。

――課題はありましたか。

90分間持たせる走力や、守備での貢献ですね。そういう部分は課題として残っています。自分が出たら得点を取らないといけなかったので、最低2試合に1点ぐらいは取らないと駄目だったのかなと思います。

――山形ではMF泉柊椰(とおや)選手と、左サイドに優秀なウインガーが揃っています。ポジション争いの方はいかがでしたか。

自分のプレーを出せば勝っていけるというところがありました。いわき戦があまりいいプレーができなかったので、最終節は途中出場になってしまいました。スタメンで出続けるには毎試合、毎試合最高のパフォーマンスをしないと、いい選手がいたら確実に代わってしまう。そういう経験をできたと思います。

この戦いで失うものはない

終始穏やかに淡々と話す宮城だが、言葉の節々に燃えたぎるほどの闘争心と得点への意欲を感じることができた。J1復帰を果たすには目の前の試合を確実に勝利していかなければならない。若干22歳のアタッカーはその本質をよく理解していた。

――J1昇格POで戦う清水の印象を教えてください

清水エスパルスは長くJ1にいましたし、個人のレベルもすごく高いと思う。自分もフロンターレのときにやっていたので分かるところが多いです。

攻撃的にきてくれるので、自分たちとしては点を取るしかない状況の部分では、引いて守られるより、清水みたいに攻撃で圧倒しようとしてくるチームのほうがやりやすかったりします。やりやすい部分がありますね。前回アウェイで自分は出ていませんでしたけど、立ち上がりからいい戦いができたうえで、0-3でした。前回の戦いでは力負けしている印象があったので、そこを考慮したら戦い方もしっかり考えないと簡単には勝てない相手なのかなと思います。

――自身の強みを活かして、清水戦をどう勝ちに持っていきたいですか。

スタメン、途中と役割は違いますけど、「一戦必勝」の戦い方なので、自分は何回もチャレンジして脅威を与え続けることしかできないですね。

サッカーはメンタルスポーツなので、相手はプレッシャーもあると思う。自分が出たことによってドリブル突破や、裏を取るプレーと、そういう部分を出し続けて確実に押し下げることで、チームにいい影響が生まれると思う。そういう部分で自分は脅威になり続けたいと思います。

――連戦です。ほぼ勝たなければ突破できない状況になりますけど、J1復帰に向けての意気込みを教えてください。

1試合、1試合勝てばJ1に行ける。J1に昇格するためという感覚で自分はやってきたつもりはなくて、自分は1試合、1試合「負けたくない」という気持ちでやってきた結果、その1試合に全力を注いで逆転勝利が終盤に起こりました。

自分が出ている試合はそういう場面が多かった。清水のようなJ1にずっといたチームは「上がらなきゃ」という気持ちでやってきてすごくプレッシャーがあると思いますけど、自分たちはチャレンジャーとして他の周りの人もみんな言っていますけど、「失うものはない」という気持ちを。

J1、J1と言っていてもまだ、そこの道、そこの景色とか分からない部分もあります。PO決勝になったらそういうことは考えるべきで、まだ目の前の1戦を自分たち一人、一人がどれだけ最大限の力を出せるかということにシフトしたほうが確実にいいパワーを生むと思う。J1昇格と言うより自分ができる最高のパフォーマンスをするイメージですね。

最大限の自分を出して昇格をつかむ

川崎では偉大な先輩の姿を見続けてきた。アカデミーの先輩である日本代表MF三笘薫、同じく日本代表MF旗手怜央と偉大な背中を追い続けてきた。欧州移籍、日本代表選出と、大きな夢を抱いている宮城だが、まずはその覇道を突き進むために眼前で対峙する敵たちを粉砕して山形のJ1復帰につなげる。

――個人の話になります。来年はパリ五輪が開催されます。そこに向けての代表入りのビジョンを教えてください。

自分が置かれた状況で試合に出続けないといけない。そもそも出続けないと呼ばれることはないと思っている。自分はいままでそんなに呼ばれてはいないので、しっかりとした活躍をして待つしかないです。ビジョンというか、いまいる自分の場所で最大限自分の特徴を出したいというだけです。

――キャリアの目標はどのように設定していますか。

そんなに先を見るタイプじゃなかったんですけど、徐々に目標を持ってやったほうが普段の生活も違うことに気付けた。先輩の三笘さんや(旗手)怜央くんと、そういう選手たちに続いてJリーグでしっかり活躍して、海外に行って、日本代表に入りたいというものはありますね。

――山形サポーターの印象を教えてください。

(サポーターは)温かいですし、自分が出ているときは劇的な勝ち方が多かったですし、僕が出ている試合は負けていないです。勝っているときはやっぱり必然的に盛り上がっていいですし、山形全体で盛り上がっている感じはありますね。

――サポーターは長年J1復帰を望んでいます。最後にサポーターへのメッセージを教えてください。

J1昇格に向けてあと2試合。自分たちも全力で向かいたいし、なにより前回アウェイで大敗した記憶が残っていると思いますので、その借りをしっかり返して、ホーム(山形に)に戻ってきたいと思います。

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クールな語り口だが、熱いハートを持つ山形が誇るチャンスメイカー宮城は、刻々と迫る清水戦に向けて静かに闘志を燃やしている。まずは清水戦、そして決勝と着実に勝利を挙げて山形をいるべき場所へと導いてみせる。

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