社説:大麻グミ 包括指定で規制強化を

 大麻類似の成分を含むグミを食べた人が体調不良を訴え、救急搬送されるケースが首都圏や大阪など全国で相次いだ。

 厚生労働省はグミから検出された合成化合物「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」を指定薬物に指定することを決めた。12月2日から所持や使用、流通が禁止される。

 東京では今月、祭りで来場者によって配られたグミを食べた5人が搬送される事例もあった。小さな子どもも口にする可能性があり、こうした食品が簡単に手に入る現状は看過できない。

 速やかに流通を食い止めることは当然だろう。一層の注意喚起を求めるとともに、製造方法や流通の実態を把握し、さらなる規制の強化を検討すべきである。

 HHCHは、幻覚や意識障害を引き起こす大麻由来の違法成分と構造が似ているが、規制対象ではなかった。

 問題は規制強化のたびに製造者が成分の一部を変え、新たな類似化合物が生まれるという「いたちごっこ」が続いていることだ。

 近年、電子たばこのリキッドなど、大麻の違法成分に似た製品が次々と発売され、厚労省は昨年3月と今年8月、該当する合成化合物を規制対象としてきた。

 今回の事案を受け、厚労省はHHCHに似た別の成分が新たに流通する可能性があるとして、類似の構造をまとめて禁止する「包括指定」も検討するという。

 かねての懸案ながら、政府の動きは鈍かった。対応を急いでもらいたい。

 若者を中心とした薬物汚染は深刻な状況というほかない。日本大アメリカンフットボール部をはじめ大学生が逮捕される事案が相次いでいる。

 今回のグミもインターネットや店舗で、高揚感やリラックス効果が得られるとして販売されていた。なじみの菓子に成分を入れることで若者の抵抗感が薄くなり、気軽に購入しやすくした形だ。

 大麻は「ゲートウエードラッグ」と呼ばれ、より強い副作用や依存性の高い薬物の使用につながりかねない。

 SNSでは「肌に良い」「少ない量なら依存症にならない」などと大麻について誤った情報があふれている。合法の国もあるが、密売を防ぐなど大麻の流通を管理するためで、安全だからではない。

 幼少期から正しい情報を伝え、危険な薬物であるとの認識を十分広めることも欠かせない。

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