長崎拘置支所、今月末で収容業務停止 「接見と移動に支障出る」 県弁護士会が継続求める

 刑事裁判を受ける被告人らを収容する長崎拘置支所(長崎市白鳥町)の業務が今月末をめどに、長崎刑務所(長崎県諫早市小川町)に集約される。法務省は施設の老朽化や効率的な運営などを理由に挙げるが、公判が開かれる長崎地裁(長崎市)から25キロ以上離れるため、接見や面会に支障が出るとして、県弁護士会は反対を表明。現在地での業務継続を求める協議を同省に求めている。
 罪が確定する前の被疑者や被告人を収容する拘置支所は4月現在、全国に94カ所あり、北海道や山口県などで廃止や集約が相次ぐ。長崎拘置支所についても2月、集約方針が示され、同省矯正局は「建物の老朽状況や近年の収容状況など諸般の事情を総合的に判断して決定した」と説明する。
 これに対し、県弁護士会は「弁護活動や被告人の人権保障の観点から重大な問題がある」と反対。連日開廷される裁判員裁判では公判後、接見時間が十分に確保できなくなる可能性があり、同会は「連日開廷の原則が崩れかねず、刑事裁判実務に影響が出る」と指摘する。
 長崎刑務所は現在、長崎地裁大村支部(大村市)管轄の被告人を収容するが、同地裁管轄の被告人が加われば、弁護士の接見や家族らの面会が集中。長崎刑務所の開庁時間内に接見、面会ができなくなることも予想される。
 接見場所の変更に伴い、移動時間と費用が増える課題が横たわる。長崎拘置支所での接見に要する時間(費用、いずれもJR長崎駅起点)は乗用車で片道約12分、公共交通機関なら路面電車(140円)と徒歩で同約30分。
 長崎刑務所の場合、乗用車で片道約40~50分(有料道路利用で最大710円)。公共交通機関を利用すると、新幹線とバスで同約30分(1570円)、在来線なら同1時間近く(700円)。JR諫早駅と長崎刑務所を結ぶ路線バスは1時間に1本しかなく、乗り継ぎがうまくできなければ、片道約1時間半から約2時間かかるとみられる。これまでより2~4倍かかる。
 同会副会長の山本真邦弁護士は「被告人の権利保護が弱くなる。刑事事件1件に費やす時間や負担は格段に増える。われわれの時間も有限だ」と漏らす。
 さらに、社会復帰を目指す被告人にとって、家族や友人、職場や福祉関係者らとの面会は重要。移動の負担を理由に面会機会が減れば、再犯防止への協議が十分にできず、更生に支障をきたすことも懸念される。
 同会は12月2日午後2時半、長崎市平野町の長崎原爆資料館ホールでシンポジウムを開く。テーマは「長崎拘置支所がなくなったらどうしますか?~もし、あなたの家族が逮捕されたら~」。無料。定員350人(事前申し込み不要)。同会(電095.824.3903)。

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