広葉樹植林で豊かな海に 京都大学フィールド研シンポで漁師ら講演

京都大フィールド科学教育研究センターの創設20周年を記念したシンポジウムで講演する畠山さん(京都市左京区・京都大)

 森・里・海の連環を探る京都大学フィールド科学教育研究センターの創設20周年記念シンポジウムが11月19日、京都市左京区の同大学であった。同センター社会連携教授でカキやホタテを宮城県の気仙沼湾で養殖する漁師の畠山重篤さん(80)が講演し、「森は海の恋人」を合言葉に取り組む広葉樹植林活動の大切さを語った。

 フィールド研は2003年、京都府舞鶴市の舞鶴水産実験所や南丹市の芦生研究林など全国9施設を統合して設立された。

 シンポで畠山さんは、高度経済成長期を経てカキの成育が悪くなったことから気仙沼湾に注ぐ川の上流域を調べた経過を説明。農薬の使われた水田や放置された人工林を見て「生き物が育つ森でないと海の生き物も育たない」と感じ、1989年から上流域への落葉広葉樹の植林を始めた。森林の腐葉土がカキなどの餌となる植物プランクトンを生む鉄分を供給し、豊かな海につながることも解説した。

 今年は夏場の高水温でホタテが死滅したと危機感を示し、温暖化対策として二酸化炭素を吸収する植物プランクトンを増やす研究の発展に期待を示した。

 シンポでは初代センター長の田中克名誉教授や朝倉彰センター長らが森里海連環学の理念や研究実績を紹介。約250人が参加した。

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