無力感と悔しさの中で生きた日々が変わった…「コクトス アキハバラ」との出会い【インタビュー後編】

ソーシャルグッドなゲストハウス「Cocts Akihabara」(コクトス アキハバラ)の支配人で、社会課題について学ぶ一歩を踏みだせる空間づくりに取り組んでいる小泉秋乃さん。

泊まるだけで社会貢献になる!? 秋葉原のゲストハウス支配人が目指すもの【インタビュー前篇】 に続くインタビュー後編では、Cocts Akihabaraで働くに至った経緯や、社会貢献と仕事の両立の難しさについて話を聞きました。

【全画像】ゲストハウス「Cocts Akihabara」施設と中の人

鬱を経験し、無力感と悔しさの中で生きた日々

──難民キャンプでのボランティアや大学卒業を経て、Cocts Akihabaraで働くまでにはどのような経緯があったのでしょうか?

難民キャンプでのボランティアを経た大学4年生のときは、ソーシャルセクターなどの社会問題への取り組みを主軸としたキャリアに進もうと考えていました。しかし、そのタイミングで鬱になってしまったんです。

インターンや就活をする心身の余裕がないまま、コロナ禍で混乱中の社会に放り出されて、それでも足元の経済は守っていかなくてはいけない。

「自分は何もできていない」「社会に目を向ける余裕もない」と悔しさを感じながら、アルバイトで生活を繋いで、生きることだけに精一杯でした。

そんなモヤモヤした日々の中、親友の紹介でCocts Akihabaraに出会い、「これだ!」と思ったんです。

ゲストハウスはもともとよく泊まっていましたし、働いたこともありましたが、それまでは単純に“世界中の人と出会える楽しい場所”という認識でした。

社会貢献とかけ合わせるという発想はなかったので、「ゲストハウスでも社会貢献ができるんだ」と別々に分けて考えていた2つの世界がつながった瞬間でした。

はじめはフルタイムで働く自信がなくアルバイトとして入社したのですが、大きなやりがいを感じて、声かけをいただいたタイミングで支配人になりました。

この場所で働くことが「こんな自分にもできることがある」と思い出させてくれたんです。

キャリアと社会を繋ぐのは、アクションの規模ではなく「持続性」

──社会貢献に取り組みながら働く上で、何が大切だと思いますか?

冒頭でお話しした“STAY FOR TWO”にも通づることですが、持続可能性は欠かせません。

SDGsや社会性を重視する傾向にある現代、商業的な目的に偏っている企業も多いですが、経済性も重視しないと社会的に意義のある事業や取り組みが持続しなくなってしまうのも事実です。

大きくて“カッコいい”アクションを起こすことにも意義はありますが、小さなことでも持続できる仕組みをつくることが大切だと思います。

また、社会課題そのものを、トレンドとして消費しないことも大切です。

SDGsやLGBTQ+といった言葉が一人歩きしている印象も受ける現代ですが、社会課題はすべて地続きで、今後も向き合っていくべきことばかりです。

トレンドとして注目されている今のうちに、企業や組織がトップダウン式で多くの人にリーチし、社会問題に目を向ける人をどこまで増やせるかどうかも鍵だと思っています。

──Cocts Akihabaraは、それまでに小泉さんが想像してこなかったような職場だとおっしゃっていました。社会貢献と仕事をつなぐためには、今いる仕事環境を変えなくてはいけないのでしょうか?

必ずしもそうとは限りません。

通り一遍では自分の仕事が社会問題に関わっていないように見えても、「その仕事だからこそできるアプローチ」が必ずあります。組織に属していると、いきなり大きな変化は起こせないかもしれませんが「この問題に取り組みたい」と個人が学びはじめた時点で、それは社会貢献のはじまりです。

ジャーナリストである安田菜津紀さんの「支援は役割分担」という言葉をみなさんにも贈りたいですね。

どんな仕事も、絶対にどこかで社会とはつながっています。

一人ひとりが自分の足元からアクションを起こせば、周囲の人にも伝播して、少しずつ世界も良くなっていくはずです。

環境を変えずに社会貢献をしたい場合は、まず今いる環境でできそうな小さなことを考えてみてください。

色々な支援の仕方、関わり方があると思うので、ぜひ一緒に模索しましょう。行き詰ったら、ぜひCocts Akihabaraにも足を運んでみてください。

誰もが安心できるセーフスペースで私たちが待っています。

私だからこそできる社会貢献の形を

──今後、挑戦したいことはありますか?

まずはCocts Akihabaraのソーシャルグッドなゲストハウスとしての認知度を上げたいです。

今は単発イベントとしてやっている勉強会やワークショップなども、定期的に開催しようと考えています。

誰も取り残さないセーフスペースを体現しつつ、活動家たちが集まり学び合える場所にもできたら嬉しいです。

私個人としては、自分が社会のためにできる役割や関わり方を増やしていきたいです。

私の心の支えになっているものの1つに音楽があるので、音楽と社会的なことをつなげることにも挑戦したいですね。

まだ具体的なビジョンは見えていないのですが、私だからこそできる社会貢献の形をもっと見つけたいと思っています。

Cocts Akihabara

住所:〒111-0053 東京都台東区浅草橋5-2-7
公式Instagram・小泉秋乃さんのInstagram

(ウェルなわたし/ 黒崎 侑美)

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