【どうする家康】秀頼と秀忠の魅力、カリスマ?ポジティブ?

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。11月19日放送の第44回『徳川幕府誕生』では、ついに家康が将軍となり、正真正銘の天下人に。それと同時に、豊臣秀頼と徳川秀忠という、対照的な二代目たちにも注目が集まった(以下、ネタバレあり)。

『どうする家康』第44回より、将軍職を譲り受けた秀忠(左・森崎ウィン)と成長した秀頼(作間龍斗) (C)NHK

■ どうする家康、それぞれの二代目が成長

関ヶ原の戦いで勝利した家康は、茶々(北川景子)と豊臣秀頼から、天下の政を引き続きおこなうという了承を得た。そこで本多正信(松山ケンイチ)が「いっそ将軍になるというのは?」と提案し、家康も「徳川は武家の棟梁で、豊臣は公家」という住み分けができると賛同。そうして1603年に家康が征夷大将軍に任ぜられ、徳川幕府は開闢(かいびゃく)した。

しかしまだ豊臣の威光と、戦を求める牢人たちが数多く残っている状況を案じた家康は、早々に将軍の座を三男・秀忠(森崎ウィン)に譲る。それを知った茶々や豊臣の家臣・大野治長(玉山鉄二)は、「太閤殿下との約定破り」と激怒した。やがて時代が流れ、秀頼(作間龍斗)は19歳の青年に成長。家康もまた、時が満ちたことを感じたのだった・・・。

■ 「柱の傷」で平坦な年月の経過を刻む描写

とうとう家康が幕府を開き、日本史も江戸時代に突入。家康の人生のひとつの大きな到達点であり、SNSでも「征夷大将軍おめでとうございます!」「徳川幕府爆誕」とお祝いの言葉が相次いだ44回。ただこの後の10年は、歴史の教科書に記されるような大きな出来事が起こらなかった時期でもある。その平坦な年月の経過を、秀頼の1年ごとの成長を記録する「柱の傷」を刻みつけることで描写するという構成は、非常に優れた発明だった。

『どうする家康』第44回より、秀頼の成長記録として柱に傷を入れる茶々(北川景子) (C)NHK

SNSでも「今日のMVPは『柱の傷が刻まれるごとに容赦なく止めどなく残酷に経過する歳月』の演出」「柱の傷と時間の経過(つまり去り行く人たち、成長する若い人たち)を絡めるってうまい」「豊臣家にとっては1年に一度のめでたい行事が、すでに破滅のカウントダウンでもあった事を暗示してるみたい」などの声が上がった。

■ カリスマ性を感じる秀頼、一方で不吉さも

そうして最後に登場した大人秀頼は、父・秀吉とは似つかぬシュッとした美丈夫。一昔前までの秀頼は、母に頭の上がらない優男として表現されることが多かったが、最近は身の丈190cm超えの堂々たる風貌だったことも合わせて、今回の作間龍斗や『真田丸』(2016年)の中川大志のように、カリスマ性を感じさせる若手がキャスティングされるようになっている。

『どうする家康』第44回より、成長した豊臣秀頼(作間龍斗) (C)NHK

おそらくは茶々に帝王学と「家康は信用できない」という呪詛を吹き込まれて成長した秀頼。SNSでは「秀頼さま~!(うちわ振る家臣)」「雅なる天下人のお顔立ち」「この秀頼さまなら今年は豊臣方が勝つ」と盛り上がる声と同時に、「腹の底に黒いものを抱えた雰囲気をまとう秀頼もめっちゃ良い」「文句なしの毒親で、秀頼が真っ直ぐ育つ方が無理だわな」と、不吉さを読み解いたコメントもあった。

■ 父同様の「頼りないプリンス」が二代目に

そんな天下への野心満々そうな秀頼に対して、父親同様「頼りないプリンス」キャラが定着してきたのが秀忠だ。今回は登場早々、家康に関ヶ原の失態を責められるという仕打ちに、SNSでは「ヤッス厳しいけど間違ってないから何も言えんな」「やっぱあれ? 自分に似てるからこそキツくなっちゃうやつ?」「秀忠、まさに昔の自分を見ているようなんじゃないか」と、家康のパワハラを叱りつつも納得したような声が。

このように心の傷をえぐっておきながら、二代目の座を優秀な兄ではなくて自分に譲ると言われたら、確かに誰もが疑心暗鬼になるだろう。そこで本多正信が「偉大なる凡庸」さが二代目には必要ということを秀忠に説くのだが、その容赦のない表現の数々に「すべてが人並みって、秀忠くんボロクソ言われてて草」「主君の息子にまったく忖度してないのが良い」と笑いが止まらないような言葉が。

『どうする家康』第44回より、正信(松山ケンイチ)から「偉大なる凡庸」を説かれる秀忠(森崎ウィン) (C)NHK

しかしそれを怒りもせず、むしろ超ポジティブに受け止めた秀忠に、「於愛の方の育て方が良かったのか、大らかすぎるw」「ここで怒らずに『たしかに! かえってよかったかも』って笑えちゃう秀忠。ぜんぜん凡庸じゃないよ大物だよ」「秀忠くんめちゃ推せるわ。このリーダーは支え甲斐がある」と、好感度が爆上がりしたというコメントが相次いだ。

家康の人生と並行して、今川氏真や武田勝頼などの「父親に比べたら・・・」と言われ続けた武将たちの汚名をすすぐ物語を紡いできた『どう家』だが、その姿勢は家康のネクストジェネレーションとなる、秀頼や秀忠にも続いていきそう。これまでになく応援したくなる秀忠と、これまでになく曲者の予感がする秀頼。このあと対照的な運命をたどる2人の2代目の対比も、今後の注目ポイントとなりそうだ。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。11月26日放送の第45回『2人のプリンス』では、秀頼の人気が高まっていくことにあせった家康が、自らの代で豊臣家との問題を解決しようとする姿と、今川氏真(溝端淳平)との再会が描かれる。

文/吉永美和子

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