ブギウギ第8週振りかえり・ワテのお母ちゃん

歌い踊ることを心から愛するヒロインが、やがて戦後を明るく照らすスター歌手となる姿を描く連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK朝ドラ)。11月25日の放送では、「ワテのお母ちゃん」と題する第8週(11月20日〜24日放送)を振りかえる。

母・ツヤ(水川あさみ)の様子に感情が乱れるスズ子(趣里)(C)NHK

■ 六郎の出征が迫るなか、自らの死期を悟るツヤ

第二次世界大戦が始まろうとしている昭和14年(1939年)、ヒロイン・スズ子(趣里)が所属する楽団「梅丸楽劇団」でも時局に合わせた演出をしていくとの方針が示される。スズ子は派手さを控えて歌うように言われ、戸惑いから本来の力を出し切れていない。また、作曲家の羽鳥(草彅剛)も、外国人の恩師が国外退去になって怒りを覚えており、このままではジャズができなくなるのではと危惧していた。

愛おしそうに六郎(黒崎煌代)と話すツヤ(水川あさみ)(C)NHK

一方、大阪のスズ子の実家では、母・ツヤ(水川あさみ)が体調を崩しており、かかりつけ医の熱々先生(妹尾和夫)から、大きな専門の病院で見てもらったほうが良いと言われていた。父・梅吉(柳葉敏郎)とツヤが診断結果に気を落としていた矢先に、弟の六郎(黒崎煌代)のもとには赤紙が届く。

六郎の出征の日が決まり、短く刈り上げた頭を照れくさそうにしているなか、相変わらず体調が悪いツヤは専門の医師の診察を受ける。診察を受けたツヤはもう自分が助からないことを悟ると、梅吉に「このことをスズ子と六郎に言わないでほしい」と伝える。

愛する妻と息子を失うかもしれない恐怖に襲われる梅吉は、ツヤの病状の重さをまだ知らない六郎が軍隊の真似をしてふざける姿に耐えきれず、その場で取り乱してしまう。

梅吉の様子でツヤの病状を悟った六郎は、その夜にツヤの寝室を訪れる。「ワイ、軍隊では頑張るねん。鈍くさいん卒業するんや」と話す六郎に、ツヤは「ほんまは、みーんなあんたみたいに、素直で正直な人間になりたいと思うてるねんで」「元気でおるんやで。お母ちゃん、あんたが帰ってくるん首長うして待ってるからな」と抱きしめる。そして訪れた出征の日、六郎は複雑な思いを抱える両親や近所の人々に見送られながら、大阪を離れるのだった。

■ 愛する母の危篤に迫られる決断、そして別れ

六郎は、入隊前にスズ子が暮らす東京の下宿先にやってくる。久しぶりに姉弟水入らずで話す二人だが、そこでスズ子はツヤの病状があまり良くないことを知る。そして、周囲には明るく振る舞う六郎だったが、戦争に行くのが実は怖いのだと本心を打ち明ける。スズ子は、「ワイ死にとうないわ」と泣く六郎を抱きしめるのだった。

戦争への恐怖を打ち明ける弟の六郎(黒崎煌代)を抱きしめるスズ子(趣里)(C)NHK

六郎を見送ったスズ子のもとに、ツヤが危篤だという電報が大阪から届く。しかし舞台の本番を控えているため、母のために大阪に戻るか、歌手として舞台に立つかの決断を迫られる。電報の内容に動揺し、心あらずのスズ子だったが、羽鳥の「むしろ自分の苦しい心持ちを味方にして、いつもよりいい歌だなんて言われるくらいじゃなきゃ僕はダメだと思う」という言葉で残ることを決意する。

ようやく大阪へと戻ってきたスズ子は、病床のツヤと再会する。病床のツヤを目にしたスズ子は、梅吉にもっと良い病院に連れていくことを提案するが、病はそれ以上に進行していた。

そんなとき、「はな湯」の常連客・アホのおっちゃん(岡部たかし)が、ツヤに食べさせてあげようと桃を見つけてくる。ツヤの枕元に桃を運んだスズ子が翌朝に目を覚ますと、かつてのように番台に座って元気に振る舞おうとするツヤの姿があり目を疑うが、すぐに無理がたたって倒れてしまう。

自らの死期を悟ったツヤは、スズ子に「ごめんなあ。ワテ、あんたともっともっとおりたかったわ」と詫びる。スズ子が涙ながらに、幼い頃の思い出の詰まった曲『恋はやさし野辺の花よ』を母へ歌ったその日、ツヤは帰らぬ人となるのだった。

■ ツヤが最後に残した奇跡

ツヤが亡くなり、スズ子は家族で営んできた銭湯「はな湯」を今後どのようにしていくか、梅吉と相談する。スズ子は、今の赤字が続く状況では、銭湯を売るか閉めるしかないのではないかと言う。

ツヤのいなくなった番台を見つめるスズ子(趣里)と梅吉(柳葉敏郎)(C)NHK

従業員のゴンベエ(宇野祥平)も自分の貯金でなんとかならないかと申し出るのだが、その金額を合わせてもどうしようもならず、スズ子は「はな湯」を閉めることを決断する。そんな時、三沢光子(本上まなみ)と名乗る女性がはな湯を訪ねてくる。光子は、かつてツヤが記憶喪失のゴンベエのために作った尋ね人の張り紙をみて訪れたのだった。

神戸の旅館で女中として働く光子は、行方不明となっていたゴンベエをずっと探していたのだといい、ゴンベエの素性は呉服屋の若旦那で「伊福部玉五郎」という名の男性ということが明らかになる。

ゴンベエ改め、玉五郎を想い続けてきた光子は彼に求婚し、ふたりの貯金を合わせて夫婦で「はな湯」を受け継ぐことになる。そして、「はな湯」を託した梅吉は、上京してスズ子と暮らすことを決めるのだった・・・。

本作は、戦後「ブギの女王」として一世を風靡した歌手・笠置シヅ子さんをモデルに、歌の才能を開花させて上京したヒロインが、昭和を代表するスター歌手として激動の時代を生き抜いていく物語。土曜日はその週の振りかえりが放送される。

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