苦難経て3年ぶり「中越ひこばえ展」 神奈川の小千谷出身・高橋さん再開の一歩

3年ぶりとなった中越蘖展の作品を見つめる高橋みどりさん(左)と直樹さん=横浜市港南区のギャラリー「CoZAの間」」

 震度7を観測した2004年10月の新潟県中越地震を機に毎秋実施されてきたアート展「中越蘖(ひこばえ)展」が、3年ぶりに横浜市港南区で開かれている。大きな被害を受けた同県小千谷市の出身で、ギャラリーを主宰する高橋みどりさん(59)は、新型コロナウイルス禍で展示の中止を余儀なくされた後、故郷の両親が他界。苦難の日々を経て、再開の一歩を踏み出した。蘖展にこれまで協力してきた版画家の作品を26日まで飾っている。

 雪深い故郷の実家には、厳冬期に備えるための準備や雪下ろしなどのたびに帰っていた。しかし、コロナ禍でギャラリー閉鎖後の21年、「すごく仲の良かった」父と母が相次いで天に召された。被災地への思いを込め、地震翌年の05年に始めた蘖展は毎秋の恒例行事だったが、心に余裕がなく、「今年はまだ再開できない」と思っていた。

 そんなみどりさんの背中を夫の直樹さん(59)が押し、同県十日町市の版画家・尾身伝吉さん(68)に連絡。毎年のように出品してきた尾身さんは「蘖展は特別な場」と快諾し、いつもより約1カ月遅れで展示が実現した。ギャラリーには、紅葉の渓谷や雪が積もったローカル線の駅など地元の風景を題材にした作品が数多く並んでいる。

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