金融アナリストが考える!拡充した【新NISA】の「成長投資枠」を徹底活用する戦略5選

前回は新NISAの「つみたて投資枠」を活用する戦略についてお伝えしましたので、今回は「成長投資枠」の特徴をご紹介し、活用法についてご提案させていただきます。


「成長投資枠」の特徴は?

現行の「一般NISA」を引き継ぐ投資枠で、「つみたて投資枠」と比べて積極的な資産運用を目的とした枠だと言えます。

投資対象は、個別株やアクティブファンドなどとなります。「つみたて投資枠」と比べると、投資対象は圧倒的に多くなります (整理・監理銘柄、信託期間20年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託などが対象外となっています)。

年間の投資上限は240万円です。

成長投資枠は、基本的には市場の成長セクターや魅力的な個別株への投資に適しており、積極的なリターンを狙うことができます。分散投資によるリスク管理が必要な枠だといえますが、ご自身の資産運用、資産形成の狙いを考えていかようにもアレンジが可能な枠でもあります。自由度が高い分難易度も高いといえるでしょう。

そのため資産形成の明確な目標設定をしてから投資先を考える方が良いでしょう。投資目的がはっきりしていると、適切な投資戦略を立てやすくなります。例えば、長期的な狙いで退職後の生活資金、中期的に子供の教育費、車や家の購入、短期的には売買益を狙う、など具体的な目標があると良いです。NISAは長期投資に活用する制度と考えられますが、いつでも利益や損益を確定することができるため、理論上は短期、中期など期間は自由です。ご自身の投資の期間を明確にすることも大切でしょう。長期投資であれば最初に明確にすることによって長期的な視点を持つこととなり、短期的な市場の変動に一喜一憂しにくくなるでしょう。

戦略は、ご自身の資産形成の狙いや、どのくらいリスクをとって、どのくらいのリターンを、どのくらいの期間で狙うのかによって多様に考えられます。その中で、戦略の一例をご紹介してみましょう。

1.「つみたて投資枠」と同じ投資信託に投資する

前回の連載でご紹介しました、つみたて投資枠と同じように成長投資枠を使うことが可能です。もともとアクティブに投資をされている方やプロの投資家でも、NISAは「つみたて投資枠」も「成長投資枠」もオルカンのみ、という戦略を取られる予定である方も実際にいらっしゃいます。

シンプルなので管理がしやすいですし、考えなくて良い気軽さというメリットや、長期間保有することで資産を着実に成長させ将来の資産形成に寄与することも期待されます。ただ、オルカン投資だけだと投資のリテラシーが上がりにくいとも言えます。パフォーマンス面でも過去のリターンなどもチェックしてご自身の戦略とフィットしているのかなど考えることをおすすめします(思ったより低い場合もあると思います)。

2.ETF(上場投資信託)に投資する

低コストで運用総額の大きなETF(上場投資信託)に投資をするというのも一つの選択肢です。

全世界型としてはVT、アメリカの比率を減らしたいのであればアメリカを除く先進国のETFであるVEAや、欧州のETFであるVGK、新興国の比率を増やしたいのであればVWOなど、分散投資をしながら地域分散のバランスをご自身で整えていく戦略も作りやすいのではないかと思います。

また、米市場に投資する場合でも、どのようなETFを選ぶかで、投資する株の傾向が変わってきます。例えば「つみたて投資枠」でS&P 500に連動する投資信託を選び、成長投資枠でVOOやVTIに投資をすると米市場の成長の恩恵をストレートに受ける形となります。VTVなら米国の大型バリュー株(割安株)、VUGなら大型グロース株(成長株)、QQQならハイテク株、VTWOならラッセル2000(小型株)…といった具合です。

成長投資枠で選べるETFは多様にありますので、目的に合ったポートフォリオを組めることはメリットでしょう。選び方のポイントとしてはご自身の投資の狙いに合っているか目論見書を確認すること。ETFを選ぶ際は運用総額が大きいもの、コストが低いものを選ぶ方が無難だと言えます。またチャートを見て、長期にわたって価格が上昇していないETFは避けたほうが良いと考えます。

3.安定した大型株、定性面の強みのある銘柄やETFを狙う

安定性を求めるのであればボラティリティ(価格変動率)が低めの銘柄、トップシェアなど業界ですでに確固たる地位を築いているような銘柄に投資するという戦略も考えられます。増配銘柄(前期よりも配当が増える銘柄)を狙うのもおすすめです。個人的にもポートフォリオに加えようと考えているのはバンガード米国増配株式ETF(VIG)です。

1銘柄で米国で10年以上の増配実績がある中・大型株に分散投資できるETFで、財務面で安全性が高い銘柄が多く含まれるためショックの際にも下落耐性が比較的強いことも長期投資に向いていると言えるでしょう。経費率は0.06%とコスト面でも有利なところもポイントです。

長期間連続増配する“配当貴族”、“配当チャンピオン銘柄”、と言われるものが多く含まれます。連続して増配できるということは、業績が良く、株主還元に積極的で、コロナ禍でも増配できるくらいの安定した需要やブランド力といった定性面の強みがあり、高収益であることが想定されます。そのような企業に分散投資でき、未来の高配当も狙える魅力のあるETFと言えるでしょう。

米国ETFはちょっと…という方はVIGを実質的な主要投資対象としている投資信託であるSBI・V・米国増配株式インデックスファンドも良い商品だと思いますので、気になる方は調べてみてください。

4.高利回りETF・個別株を狙う

長期安定投資で将来の資産を築く方法の一つが高利回り銘柄で複利の力を使うことです。そこで、利回りの高いETFや利回りの高い個別株を狙うのも選択肢の一つとなるでしょう。

例えば米国の高配当ETFで有名なSPYDも新NISAの成長投資枠の対象です。SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETFで、S&P500高配当指数を基準としており、S&P指数構成銘柄の中で配当利回りが高い80銘柄に投資できる ETFとなっています。配当利回りが高く、手数料が安いことが魅力のETFといえますね。直近配当利回り(税込)は4.95%、経費率は0.07%です。

組み入れ比率はエネルギー会社が上位に多く、公共事業や金融、生活必需品、不動産、ヘルスケア関連銘柄などが組み込まれています。

5.成長しそうな国のETFを狙う

長期投資だからこそ、今後成長が期待できそうな新興国に投資したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。新興国の個別株はハードルが高いという方もETFや投資信託を活用すれば簡単にポートフォリオに組み込むことができるでしょう。

例えば今投資業界でグローバルサウス(Global south)への投資に注目される方が増えていますが、グローバルサウスを投資対象として着目したファンドであるEXE-iグローバルサウス株式ファンドも新NISAの成長投資枠の対象となっています。

グローバルサウスとは、欧米諸国や日本などの先進国が多い北半球と対比するときに使用されることが多くインド・インドネシア・トルコ・南アフリカなどの南半球に位置する主に新興国・発展途上国・第三世界と同様の意味で用いられることが多いです。世界の分断が意識されているなかで独立した経済の発展が期待される国々の総称として捉えられています。EXE-iグローバルサウス株式ファンドの運用管理費用は年0.582%(税込)程度となっており主な投資対象国は、ラテンアメリカ、アフリカ、中東、南アジア、東南アジアの地域の新興国です。

インドにも注目してみましょう。信託報酬は0.4638%程度で業界最安となるインドのインデックスファンドである、SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド(サクっとインド株式)は、S&P BSE SENSEXインデックス(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果を目標として運用を行う投資信託で、簡単に言うとインドに分散投資ができる投資信託です。

なぜインドかと言うと、太陽観測衛星「アディティヤL1」の打ち上げに成功するなど、高い技術力を持った国であるということや、新興経済国で形成されるBRICSに加盟しており、IPEF(インド太平洋経済枠組み)に参加して米国とも経済連携を深めていること、2040年代まで人口が増え続けると言われ、これから人口ボーナスが期待できるほか経済成長期はまだ初期段階だといえることも魅力だからです。ただ、インドの通貨であるルピーが安いこと、インフレ圧力やモディ首相の後継者問題、パキスタンとの対立などリスクもあることは覚えておいてください。

その他(金投資、テンバガー狙いなど)

長期的なリスクヘッジを考えるなら金投資も有力な選択肢となるでしょう。コモディティはNISAの対象ではありませんが、例えば三菱UFJ信託銀行が受益権を発行する純金上場信託「金の果実」(1540)は新NISAの対象です。純金上場信託は、国内の金先物価格から評価したETFで、小口から投資が可能であり、金現物の裏付けがあり金地金との交換が可能と言う特徴があります。日本でも物価上昇が続いているなかで金は購買力を維持するインフレ対策としては有効ですし、個人的にも運用資産全体の1割程度を上限の目安に保有するのがいいのではと思っています。

また成長力やテンバガー(株価が10倍になりそうな銘柄)狙いの個別株も、選び方にセンスが問われますが、1割くらいを目処に検討してみてはいかがでしょうか。長期投資だからこそ、米国のペニー株(一株の価格が非常に安い株)や新興国の個別株、日本のベンチャー株などを、未来10倍100倍の株価を期待して保有しておくというのも夢があって良いのではないでしょうか(あくまでリスクを考えて1割くらいに抑える方が良いと思いますが)。投資家としての醍醐味、非課税の恩恵もより期待できそうです。


今回は「成長投資枠」についてお伝えしましたがいかがでしたか?結論としては、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」どちらも使うのも、どちらかだけ使うのも、ご自身の投資戦略に合わせて選べば良いと思います。また両制度を組み合わせて利用することで、リスク分散と資産成長のバランスをとることが可能です。

投資初心者はまずはつみたてNISAから始めると良いでしょう。

投資はリスクを伴いますので、自分の投資スタイルやリスク許容度に合った方法を選ぶことが大切です。また、専門家のアドバイスを受けることも一つの方法ですが、まずご自身が何のために新NISAで投資をするのか明確にしてからアドバイスを受けるようにしてください。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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