婚姻数“激減”も「移住婚」コロナ禍前から“微増”の背景とは? 「オンライン婚活」の今

婚姻数はこの20年間で約30万件も減少している(bluet / PIXTA)

生涯1度も結婚しない未婚の割合が増え、少子化が進む中、婚活市場に新たな風が吹いている。全国に結婚相談所を展開する日本仲人協会(東京本部・東京都新宿区)が11月22日の「いい夫婦の日」を前に行ったアンケートで、WEB上のオンラインお見合いによって地方、遠隔地へ移り住む「移住婚」がコロナ禍の前よりおよそ1.3倍増えていることが分かった。

オンラインお見合いは “出会いのハードル”を下げる?

外出を制限されたコロナ禍で、それは唯一とも言える好結果だと言えるかもしれない。

クラウドサービス(アプリケーション)の「ZOOM」などを用いたWEB上での交渉・商談等が増え、ビジネスシーンが効率化された。それは生涯の伴侶を見つける婚活市場にも影響を及ぼしている。

筆者も以前、婚活を行っていたことがあったが、遠距離の相手とのお見合いをする負担は大きかった。東京から大阪まで、飛行機で日帰りお見合いをし、結果断られたこともあった。オンラインお見合いはそうした負担を無くし、また、地方や遠隔地に住む相手との出会い、交際のハードルを一気に引き下げた。

日本仲人協会の広報担当者によると、2022年以降、オンラインお見合いをきっかけにした遠距離恋愛と、そこからの「移住婚」がコロナ禍の前と比べて1.3倍(約40件)に増えたという。

「飲食費や移動費のねん出が厳しくても、オンラインであればお金をかけずに出会うことができます。遠方の人とも気軽にお見合いができることから出会いの幅を広げるきっかけにもなっています」(日本仲人協会・広報担当者)。

出会いからわずか2か月半で婚姻届け提出へ

日本仲人協会会員のSさん(33歳男性、埼玉県在住)とMさん(31歳女性、静岡県在住)もオンラインで出会った一組。2人は9月4日、「ZOOM」のモニター画面を通して出会った。

慣れないモニター越しでのやりとりだったが、「笑顔がすてきだった」(Sさん)、「最初から打ち解けてくださった」(Mさん)とそれぞれ好印象を持ち、また、共に絵画が趣味ということもあり、話が弾んだ。

横浜での“リアル”の1回目のデートに続き、東京・浅草で2回目のデートを行った際は、Sさんが展覧会に出展した色鉛筆で描いた静物画を鑑賞。将来を共に彩っていくことを決めた。ふたりは出会いからわずか2か月半後の「いい夫婦の日」にSさんが住む埼玉県熊谷市の市役所に婚姻届を提出した。

「埼玉にはゆかりがない。(静岡に住む)両親、家族と離れ離れになる。仕事も一から探さなければならない。生活の基盤をどうするか、公共施設はどこにあるのかなど、分からないことも多い」と不安を語る妻Mさんに対し、「新しく購入した一戸建て住宅で(妻の家族を)招きたい」と優しさを見せる夫Sさん。

それぞれが「笑顔があふれる楽しい家庭を築いていきたい」(Sさん)、「一日一日を大切にしていきたい」(Mさん)と、結婚生活の抱負を語り、オンラインで婚活を行う人たちへ「会う機会が少ない。連絡は密に取り合ってください」(Mさん)と、アドバイスも送った。

全国の200を超える自治体から問い合わせも

未婚化が進み、婚姻数はここ20年間で約80万から約50万に急激に減少している(厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より)。

少子化も歯止めがかからず、今年1~6月に赤ちゃんの出生数は前年度同期比3.6%(1万3890人)減の37万1052人で、2000年以降ではもっとも少なくなっている(同「人口動態統計速報」令和5年8月分より)。

そうした状況を少しでも改善させようと、一般社団法人「日本婚活支援協会」(本部・東京都港区)は2020年8月から、結婚を機に地方や遠隔地に移り住む「移住婚」を支援する自治体の募集を開始。これまでに40以上の都道府県の200を超える市町村から申し込み、問い合わせがあり、今年10月時点で全国の879人から「移住婚」の希望が寄せられているという。

婚活・結婚の新たなスタイルとして、オンラインお見合い、そして「移住婚」が今、静かに注目されている。

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