朝乃山、元大関対決制し3勝目 力強く前へ、正代寄り切る

  ●「地元の声援一番力に」

 大相撲九州場所(福岡国際センター)14日目の25日、東前頭筆頭の朝乃山(富山市呉羽町出身、富山商高OB、高砂部屋)は同2枚目の正代(時津風部屋)との元大関対決を制し、2連勝で3勝目を手にした。今場所一番の好内容で「前に出る」相撲を体現し「みんなで応援してくれるのはうれしい。地元の声援が一番力になる。今年最後の一番、いい相撲で終わりたい」と気合を入れた。

 「あさのやまー」「しょうだいー」。抜群の人気を誇る朝乃山と、ご当所の正代が土俵に立つと、館内は異様な熱気に包まれ、応援合戦の様相を呈した。

 互角の立ち合いから朝乃山が右を差し勝つと、すぐに左上手も引きつけて得意の右四つに。右に逃れる正代に落ち着いてついていき、力強く前進し、そのまま寄り切った。「先場所はもろ差しを許して負けている。右を差し勝ったことが大きかった」と勝因を自己分析した。

  ●先代師匠が先場所に活 「前に出ろ」言われ続け

 今月2日に先代師匠で元大関朝潮の長岡末弘さんが死去。先場所の14日目で正代に完敗した後に活を入れられ、これが2人の最後の会話になったという。入門時から「前に出ろ」と言われ続けた。亡き師匠からの言葉を胸に、先場所の雪辱を果たした朝乃山。「少し押されたけど、前に出て寄り切れて良かった」と表情を緩めた。

 今場所で初めて右四つ万全の朝乃山本来の相撲を見せた。10月末の秋巡業で左ふくらはぎを痛め、初日から休場した。「全休したくない。番付が落ちるのを少しでも止めたい」との思いで出場に踏み切ったが、思うように結果が出せず苦しんだ。復調の兆しを見せた相撲に朝乃山は「前に出れば、足への負担が減らせる。今日のような相撲は明日につながるかも」と笑った。

 千秋楽の相手は東小結阿炎(錣山部屋)に決まった。過去は6勝4敗で、先場所は朝乃山が押し出しで勝利している。スピードのある突き、押しが武器で、引きも得意のくせ者だ。「一つでも多く白星を積み重ねたい」。泣いても笑っても今年最後の一番に持てる力を全てぶつける。

© 株式会社北國新聞社