[社説]自民派閥の政治資金 修正で終わりにするな

 2022年分の政治資金収支報告書で、自民党5派閥、1グループの政治団体で政治資金パーティー収入の不記載があった疑いが新たに浮上している。

 パーティーの収入を巡っては、自民党5派閥の18~21年分の収支報告書で過少記載があったとして政治資金規正法違反容疑で告発されたばかりだ。東京地検特捜部は派閥の担当者らを事情聴取している。

 記載漏れは分かっているだけで18~21年分が約4千万円、22年分は少なくとも計228万円に上る。最大派閥の安倍派をはじめ、麻生派、茂木派、岸田派、二階派、森山派、谷垣グループで確認されている。

 もとより政治資金の処理で肝心なのは、透明性の確保である。政治資金規正法は、20万円を超えるパーティー券を購入した個人や団体、金額を政治資金収支報告書に記載するよう定める。

 告発を受けて、各派閥は事務的ミスだと説明し、報告書を修正した。

 しかし動きは迅速とは言えず、衆院予算委員会での野党の追及に押される形での対応だった。記載漏れ件数の報告はあったが、金額を公表したのは麻生派だけ、説明責任を尽くしたとは言い難い。

 主要派閥による、複数年に及ぶ政治資金の不適切な処理の問題である。

 むしろこれは氷山の一角で、法律の抜け道が広く共有され、不記載が常態化しているのではないか。

 修正したから終わりというわけにはいかない。

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 過少記載を巡っては「裏金をつくっているのではないか」との疑惑も渦巻く。 

 岸田文雄首相は「裏金うんぬんとの指摘は当たらない」とするが、ずさんな管理による、法律の軽視は明らかだ。

 政治資金パーティーの収入を少なく記載した問題では、昨年12月、薗浦健太郎元自民党衆院議員が議員辞職に追い込まれ、略式命令を受けた。

 薗浦氏の元政策秘書は、選挙時に使う「裏金」をつくる目的との供述をしていた。

 20万円を超えるパーティー券購入者の氏名や金額の記載は義務付けられているものの、それを検証する仕組みは確立されていない。さらに20万円以下なら記載は不要。購入者が個人や企業なら公に報告する義務もない。

 「政治とカネ」の問題に詳しい岩井奉信日大名誉教授は「悪用すれば、誰もが匿名で無制限に買うことが可能で、裏金づくりも容易だ」と指摘する。

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 公表された22年分の政治資金収支報告書によると、コロナ禍明けということもあり、政治資金パーティー収入は34.5%増の82億円に上る。

 政治家や派閥の活動資金集めの手段になっているからこそ、法律に沿った正確な処理が必要である。

 後を絶たない「政治とカネ」の問題に、国民は辟易(へきえき)している。それが深刻な政治不信につながっていることを直視しなければならない。

 透明性の確保はもちろん、「抜け穴」を防ぐ法改正にも取り組むべきだ。

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