ホタテ稚貝大量死、想定上回る高水温

青森市議らにホタテ稚貝の被害状況を説明する澤田組合長(右端)=16日、青森市の奥内漁港

 今夏の記録的な猛暑により、陸奥湾で高水温の影響とみられるホタテガイ稚貝の大量死が報告されている問題で、水温が比較的低いとされる水深30メートル前後の下層でも、稚貝が死ぬ被害が出ていることが漁協などへの取材で分かった。2010年の高水温被害の教訓を踏まえ、漁業者は養殖施設を下層に沈める対策を取っていたが、想定を上回る高水温で、被害を防げなかった状況が浮かび上がった。

 「今年の高水温はとにかく桁違いだった」。16日、青森市の後潟漁協の山口隆治組合長が、視察に訪れた青森市議らに説明した。

 市沿岸の同漁協と青森市漁協の漁業者が養殖施設を設置している海域は、場所によって差はあるものの、平均的な深さは30メートル前後という。同市久栗坂沖では今夏、水深30メートルでも水温が25度超になる日があった。

 ホタテの稚貝は水温が23度を超えると成長が鈍り、26度超になると死ぬ危険性が高まるとされる。市沿岸では遠浅のため下層に沈められない場所もあったといい、漁協関係者によると青森市漁協は稚貝の約9割、後潟漁協も半数近くが死んだとみている。

 平内町漁協清水川支所のある漁業者も今夏、ホタテ養殖施設を30メートルより深く沈めたが、死ぬ稚貝が出たと説明。「高水温は十分警戒していたが被害を回避できなかった」と肩を落とした。下層でも局所的に高水温になり、被害が出た場所もあったとみられる。各地の詳細な被害状況は、12月にまとまる通し。

 湾内のホタテは10年、高水温で約7割のホタテが死ぬなどの大打撃を受けた。青森産技センター水産総合研究所(水総研)はその後、湾内の水温測定ブイをそれまでの3カ所から10カ所に増設し、漁業者への情報提供を充実させた。さらに今夏は、養殖施設を水温の低い下層に沈めるよう繰り返し呼びかけたが、それでも被害が出た。

 水総研の野呂恭成・総括主幹研究専門員は「今回の高水温は想定を上回った」と説明する。高水温の発生メカニズムは、天候に加えて海流、海底の地形などの要素が複雑に絡んでおり、今後さらに解析を進める方針という。

 青森市漁協の澤田繁悦組合長は16日、死んだ稚貝を確認しながら「10年の高水温被害の教訓を踏まえ、漁業者は養殖施設を沈めるなどしっかりと対応した。だが、自然(の脅威)はさらにその上を行っている」とうなだれた。

 漁業の気候変動への対応に関し、青森市の西秀記市長は22日の定例会見で「温暖化で今後、水温がさらに高くなる可能性も否定できず、そうなると、ホタテの養殖そのものが難しくなる」と危機感を示した上で、研究機関などと連携し、ホタテに代わる新たな養殖魚種の検討にも取り組む必要がある-との認識を示した。

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