「住宅ローンを返済しつつ余力があるうちに新NISAをフル活用したい」2歳と5歳の子をもつ40代夫婦のマネープランで注意すべきこと

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、42歳の女性。不妊治療を経て現在2歳と5歳の二人の子を授かった相談者。家族構成も固まったため新居も建て、ローンを返済しながら新NISAをフル活用していきたいといいます。どんなマネープランを組むべき?FPの坂本綾子氏がお答えします。


結婚は20代のときでしたがなかなか子どもを授かることができず、不妊治療で500万ほど使いました。結婚10年目でやっと授かることができ、幸いすぐに二人目にも恵まれ家族構成も固まったため、念願だった注文住宅を建設中で年内引き渡し予定です。

まだ子どもが小さくこれから教育資金も必要になってくる中住宅ローンの返済が始まりますが、家計には今のところ余力があると感じており、年齢のことを考慮すると余力があるうちに新NISAをフル活用したいと考えています。 生活防衛資金について調べていますが子どもの年齢から考えたときに現預金をどれくらい残しておいたほうがよいのか目安が分からず、またこの投資ペースを維持してもよいかどうかも含め、投資額についてアドバイスいただきたいです。

想定進路:中学から私立、理系大学まで

【相談者プロフィール】

・女性、42歳、会社員

・配偶者:45歳 ・子ども:2歳、5歳

・お住まい:関東地方、持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:75万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:220万円

・給与・事業収入以外の収入:児童手当月額2万円

・毎月の世帯の支出の目安:49万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:15万円

・食費:10万円

・水道光熱費:2万5,000円

・教育費:3万5,000円

・保険料:7万円

・通信費:1万円

・車両費:2万円

・その他:8万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・ボーナスからの年間貯蓄額:160万円

・現在の貯蓄総額:1,200万円

・毎月の投資額:11万円

・現在の投資総額:920万円(ジュニアNISA295万×2名、妻つみたてNISA190万、夫つみたてNISA140万)/iDeCo 230万(妻100万、夫130万)

・現在の負債総額:5,300万円=住宅ローン:物件購入額6,500万円、借入額5,300万円(2,650万円×2名のペアローン)、金利0.64%、返済期間35年、残債5,300万円

坂本:時間がかかったとはいえ2人のお子様に恵まれ、間もなく新居での生活も始まります。これからも順調に進んでいけるようアドバイスいたします。ご相談の内容は2024年から枠が大きくなるNISAを活用するにあたり生活防衛資金をどれくらい残しておけばよいか、また今の投資ペースを継続してよいか、です。

今後の貯蓄はすべてNISAとiDeCoに

現在、手持ちの貯蓄は1,200万円。記載はありませんが、安全資産の預金なら、防衛資金はこれで十分です。今後の貯蓄はNISAとiDeCoに、つまりすべて投資に回して問題ないでしょう。毎月の支出は49万円で年間では約600万円。1,200万円の貯蓄は生活費の2年分にあたるからです。

そのうえで、出産が遅めだった相談者さんご夫婦は、家計運営でいくつか注意したいことがあります。

高齢出産夫婦の家計管理は老後から逆算する

出産が遅い、あるいは住宅購入が40代に入ってからの人は、今後のライフイベント表を作ることをお勧めします。子どもが自立するとき、住宅ローンを完済するときに何歳かを確認したいからです。下は相談者さん一家のライフイベント表です(35年間を簡潔に示せるよう5年刻みにしています)。

まずは教育費から確認しましょう。

進路の希望は中学から私立、大学は理系とのことですから、塾通いが始まる10歳前後から増え始め大学がピークとなります(オレンジ色で示したあたりです)。上の子どもが大学生のときに夫は60歳を超え、下の子どもの大学卒業時には夫は65歳、妻は62歳です。勤務先の定年年齢は何歳でしょうか? 早急に確認して教育費がピークとなる50代後半から60代前半のやりくりを検討しておいた方がいいでしょう。50代半ば以降は役職定年で給与が下がり、60歳で定年、その後は65歳まで継続雇用で働けるものの給与は大幅に下がる会社が主流です。

すでに子どもの教育資金として、1人につき元本295万円をジュニアNISAで貯めています。ジュニアNISAは2023年末で廃止となりますが、保有している分は子どもが18歳になるまで運用を続けられます。大学の受験費用と初年度費用の一部はこれでまかなえそうです。今後貯めていきたいのは、残りの分の授業料など。2024年以降の新NISAで準備しましょう。

住宅ローンは繰上げ返済必須

次に住宅ローンです。完済時期は、相談者さんが77歳、夫が80歳。年金生活に入った後も住宅ローンの返済が続くのは大変です。繰り上げ返済をすることで返済期間を短縮し完済時期を早めることができますから、繰り上げ返済は必須です。金利から推測して変動金利の住宅ローンですね。金利上昇により利子の負担が増えるリスクも抱えています。

ただし、借入金利は0.64%とのこと。2023年中の入居であれば一般住宅でローン残高3,000万円まで住宅ローン控除の対象です(他の条件は満たしていると想定します)。ペアローンにしたことで限度額内に収まり、年末残高の0.7%が13年間、税額控除されます。利息分とほぼ同額の税金が戻ってくるので、利息の負担なしで借りているのと同じ状況です。今後、住宅ローン金利が仮に1.5%に上がっても、1.5%-0.7%=0.8%が実質負担する金利となり、まだまだ低い水準です。よほど急激な金利上昇がない限り、繰り上げ返済は13年間の控除期間が終わってからでいいでしょう。この間にしっかりと繰り上げ返済の資金を貯めておきます。この資金準備も新NISAで行います。

併せて、勤務先の退職金や企業年金の制度も確認してください。60歳以降の生活をイメージしつつ、そこから逆算して、お金の使い方と資産形成を考えます。

大きな流れとしては、1,200万円を生活防衛資金とし、NISAとiDeCoで資産を増やし、NISAから子どもの教育資金や住宅ローンの繰り上げ返済資金を出す。老後資金は、iDeCo、公的年金、勤務先の退職給付、NISA(教育資金と住宅ローンの繰り上げ返済に使った残り)です。

家計の収支をしっかり把握して

さて、現在の家計収支を細かくみてみると…。毎月の世帯の手取り75万円に対して、支出49万円、投資11万円で収支に15万円の差があります。これは使途不明金でしょうか? 共働きで子どもも小さく大変だと思いますが、家計簿アプリなどを利用して、ここをはっきりさせましょう。というのも、今後、支出が増えることはあっても減ることはないと予想されるからです。

持ち家になると、これまで不要だった固定資産税や火災保険料を払うことになります。不具合が起きたときの住宅の修繕費なども自分持ちです。また、子供の成長に伴い、食費や光熱費などの生活費も増えていきます。車を持っているので買い替え費用も必要です。相談者さんが記載されている通り、これから10年ほどはまだ家計に余力がある時期ですので、この時期にしっかり資産を増やしておくことが重要です。仮にこれから10年間、今の貯蓄ペースを維持できるなら元本で3,000万円になり、手持ちの資産と合わせて10年後の金融資産は5,000万円程度(元本)になります。

保険の内容は要確認

最後に保険の見直しを。ここまでの話は共働きによって成り立っています。夫婦ともに一定の死亡保障を確保しておいた方がいいでしょう。保険料が毎月7万円でかなり高めですが、内容はどうなっているのでしょうか。住宅ローンを組むことで、それぞれのローン分には保障が付きます。合理的な保険料で必要な保障が確保されているかを確認してください。

投資額は今のままのペースで、もし不安を感じる場合は、リスクが低めの投資信託を選ぶなど投資の内容で調整しましょう。

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