笑い通し被爆の実相伝える「アップダウン」 平和教育で初披露 長崎総大付高「演技に引き込まれた」

生徒に漫才を披露するお笑いコンビ「アップダウン」の2人=長崎市網場町、長崎総合科学大

 被爆者の体験を基にした劇を交えた漫才が、初めて学校の平和教育の一環として上演された。生徒は声をあげて笑ったり、真剣な表情でステージを見つめたり。仕掛け役の「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」の山崎和幸会長(71)は「笑いを交えたアプローチが原爆の暗いイメージを一新し、見方を変えることができる。そんな狙いが確信に変わった」と胸を張り、県内学校での広がりに期待する。
 演じるのは北海道出身の阿部浩貴さん(46)と竹森巧さん(45)のお笑いコンビ「アップダウン」。戦時中の出来事などをユーモアを交えて漫才で紹介した後、被爆医師、故永井隆博士の著書を基に、被爆者の心の傷を劇で表現する。2年前、同会の依頼で制作し、各地で活動している。
 17日、学校初公演は長崎市の長崎総合科学大付属高(333人、松本浩校長)。他県出身の生徒が多く在籍し、原爆や平和への意識が異なるため、幅広い題材を選んで平和教育を続けている。
 鑑賞した山口瑚白さん(16)=2年=は「最初は漫才と聞いて『不謹慎では』と思ったが、演技に引き込まれ(当時を)想像できた」、福島華緒里さん(17)=同=は「周りの生徒もいつも以上に真剣に聞いていた」と話す。
 生徒の真剣なまなざしは演者にも伝わった。「(生徒が)だんだん前のめりになり、後半は集中しているのが分かった」と竹森さん。高校生向けに内容の一部を変更した効果も感じた。阿部さんは「丁寧にメッセージを伝えることを意識した。若い人もちゃんと見てくれると手応えを感じた」と語る。
 この日は市外の学校関係者も見学。山崎会長は「生徒の反応は非常にうれしい。この灯を消さないで広げたい。被爆2世の思いを伝える第2弾の制作も進めたい」とし、若き漫才師とともに“平和の道しるべ”になる決意を新たにした。

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