社説:短期大の苦境 強み生かす工夫で選択肢に

 日本の高等教育の一翼を担ってきた短期大で募集停止が相次いでいる。

 四年制大志向の高まりが背景にあるが、より軽い経済負担で、実学重視の環境を提供してきた役割は小さくない。現代の社会ニーズに応える学科再編や大胆な連携などで、新たな存在感を示してほしい。

 短大は戦後まもない1950年に制度化された。近年は四年制大への進学率の上昇に加え、少子化の影響もあり、学校数、学生数ともに減少の一途をたどっている。

 文部科学省の調査によると、短大・短期学部の2021年度の学校数は317校で、30年前の1991年度(592校)に比べて約半数になった。入学定員も21年度は約5万5千人で、91年度の約4分の1にまで大きく減っている。

 全国的な状況と同じく、「学生のまち」である京都でも短大は苦境に立たされている。今年に入って、龍谷大短期大学部と池坊短大が大幅な定員割れを理由に25年度以降の学生募集を停止することを決めた。

 学生の確保で厳しい状況が続く一方で、短大ならではの魅力を打ち出そうとする動きも活発化している。

 短大の特徴として、専門職に必要な知識や技術を効率的に学べることが挙げられる。

 保育士や幼稚園教諭、看護師、歯科衛生士など資格取得に向けた教育プログラムが充実し、就職に有利とされる。修業年限が2~3年と短く、早く社会人として活躍できる一方、入学後にさらに深い学びや研究を望む場合も四年制大への編入制度が用意されている。

 四年制に比べ、卒業までにかかる費用は約半分という統計データもあり、強みといえよう。

 短大の歩んできた歴史を振り返ると、社会状況とともにその役割を機敏に見直してきたことが分かる。

 制度化当初は、現在に比べて初婚年齢が早かった女性向けの教養教育機関としての側面が大きかった。その後は女性の社会進出による四年制大への進学率の高まりで、実学重視にかじを切り、共学化も進んだ。

 共働き世帯の増加や高齢化の進展で、子育て支援や介護などの分野で専門職の需要は高い。こうした社会の変化に柔軟に応えられるなら、短大の存在意義は発揮できる余地があろう。

 地元からの進学者が大半を占める地域密着型の高等教育機関として、社会人の「学び直し」や生涯学習の場としての役割もさらに重みを増す。

 短大のみならず、18歳人口の急減で「大学過剰時代」に入る中、四年制大も定員割れや経営悪化がみられる。法人の垣根も越え、短大と四年制が互いの利点を生かした連携を強め、国内外の若者に魅力的な選択肢を整えることが欠かせない。

© 株式会社京都新聞社