11月27日、WEC世界耐久選手権は2024年シーズンの暫定エントリーリストを発表した。来季は従来の3クラスから2クラスにカテゴリーが減少するが、グリッドには制限値いっぱいの37台が並ぶ予定だ。
来年3月にカタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで開幕戦が行われる2024年のWECは、既報のとおりLMP2クラスとLMGTEアマクラスが廃止され、後者に代わって新設される“LMGT3”と、最高峰カテゴリーである“ハイパーカー”の2クラス制で実施される。
■ハイパーカークラスに計19台が参戦
TOYOTA GAZOO Racingなどすでにいくつかのチームがドライバーラインアップを発表しているハイパーカークラスには、既存メーカーのトヨタ、プジョー、フェラーリ、ポルシェ、キャデラックの5社に、“新顔”のランボルギーニとBMW、アルピーヌ、さらにはイソッタ・フラスキーニの4社が参入し、参加ブランド数は計9つに。2012年に現行シリーズが開始されて以来、最多となる19台のプロトタイプカーがトップカテゴリーのグリッドに並ぶこととなった。
一方、ハイパーカー初年度の2021年からプライベーターとして参戦していたグリッケンハウス・レーシングと、昨年ハイパーカークラスデビューを果たしたフロイド・ヴァンウォール・レーシングチームはともにリストから姿を消している。
ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定のハイブリッド車を走らせるTOYOTA GAZOO Racingとプジョー・トタルエナジーズは今季と同様に2台体制を敷く。また、LMDhマシンを投じるキャデラック・レーシングのシングルカー体制も2023年から変わらない。
既存メーカーの中で変化があるのは“ル・マンウイナー”のフェラーリ・AFコルセで、ワークスカーが2台であることに変わりはないが、リシャール・ミル・AFコルセのゼッケン“83”を受け継いだ3台目の『フェラーリ499P』が登場する。ポルシェもファクトリーマシンの数は同じながらカスタマーチームであるハース・チーム・JOTAが2台目のマシンを送り込むことで、プロトン・コンペティションの99号車と合わせて総勢5台体制となった。
ニューカマーでは、今シーズンのLMP2クラスでシリーズチャンピオンを獲得し満を持してトップカテゴリーに乗り込むBMW MチームWRTが、2台の『BMW MハイブリッドV8』で参戦する。ミック・シューマッハーら6名のドライバーを発表したアルピーヌ・エンデュランス・チームも新車『A424』のペアを走らせる予定だ。
一方、ランボルギーニ・アイアン・リンクスは前述の2メーカーと同じくLMDhマシンを走らせるが、こちらは『ランボルギーニSC63』1台のみのエントリーとなっている。ゼッケンナンバーはもちろん“63”だ。
新規チームの中で唯一のLMHメーカーあるイソッタ・フラスキーニもシングルカーでの出場となり、2023年の参戦を目指していたイタリアの老舗ブランドが手掛けた『ティーポ6-C(以前はティーポ6 LMHコンペティツィオーネと呼称)』がいよいよWECデビューを果たすことになる。なお同社とパートナーシップを結んでいたベクター・スポーツは、イソッタ側の契約違反を主張しLMHプログラムから離脱している。
■LMGT3に佐藤万璃音とDステーションが参戦へ
GT2時代から長く続いたLM-GTEカテゴリーの終焉にともない、来季2024年は“LMGT3”という新しいクラスが立ち上げられる。この新カテゴリーの登場はLM-GTEよりも多彩なモデルラインアップを誇るFIA GT3カーによる闘いがWEC/ル・マンで繰り広げられることを意味し、初年度にはヨーロッパとアメリカ、そして日本のGT3カーが激突することとなった。
参戦メーカーはフェラーリ(AFコルセ)、ポルシェ(マンタイ)、BMW(チームWRT)、ランボルギーニ(アイアン・リンクス)、アストンマーティン、マクラーレン(ユナイテッド・オートスポーツ)、シボレー(TFスポーツ)、フォード(プロトン・コンペティション)、レクサス(アコーディスASPチーム)の計9社だ。
一方、非ワークスチームが参加するプロ・アマカテゴリーであるLMGT3では、グリッド枠の関係で参戦台数やメーカーに一定の制限がかけられた。そのうちのひとつが1ブランド2台までというもの。これによりほとんどのGT3メーカーが1チーム2台体制を敷いている。
唯一の例外はアストンマーティンで、今シーズンのLMGTEアマクラスを戦ったハート・オブ・レーシングチームと、日本のDステーション・レーシングが1台ずつ改良型バンテージGT3を走らせる見込みだ。このためLMGT3の最初のシーズンは10チーム、計18台で争われることになる。
なおアストンマーティンはこれに当てはまらないが、LMGT3の参加枠はハイパーカークラスに参戦しているブランドにグリッドの“優先権”が与えられている。フェラーリをはじめ、ポルシェ、BMW、ランボルギーニ、GM(キャデラック/シボレー)、レクサス(トヨタ)がこの対象だ。
これらのメーカー以外では前述のイギリス車メーカーとフォード、そして佐藤万璃音がドライブすることになったマクラーレンが選ばれたが、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパなどで成功を収めているメルセデスAMGは、近年のWEC/ル・マンから“遠い存在”であるためか選出されず。また、2023年限りでワークス活動を終了しカスタマーサポートにシフトすることを発表している、かつての“耐久王”アウディもLMGT3メーカーリストに入らなかった。
ロサイル・インターナショナル・サーキットでの開幕戦を皮切りに、イモラ、スパ・フランコルシャン、ル・マンへと続き、後半戦はサンパウロ、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ、富士スピードウェイ、そして全8戦のフィナーレをバーレーンで迎えるWEC・2024年シーズンの暫定エントリーリストは以下のとおりだ。
■WEC世界耐久選手権 2024年シーズン暫定エントリーリスト(11月27日付)
Pos. No. Class Team Car Driver Tyre
1
2
HYPERCAR
キャデラック・レーシング
キャデラックVシリーズ.R
E.バンバー
A.リン
TBC
MI
2
5
HYPERCAR
ポルシェ・ペンスキー・
モータースポーツ
ポルシェ963
M.キャンベル
M.クリステンセン
F.マコウィッキ
MI
3
6
HYPERCAR
ポルシェ・ペンスキー・
モータースポーツ
ポルシェ963
K.エストーレ
A.ロッテラー
L.ファントール
MI
4
7
HYPERCAR
トヨタ・ガズー・レーシング
トヨタGR010ハイブリッド
M.コンウェイ
小林可夢偉
N.デ・フリース
MI
5
8
HYPERCAR
トヨタ・ガズー・レーシング
トヨタGR010ハイブリッド
S.ブエミ
B.ハートレー
平川亮
MI
6
11
HYPERCAR
イソッタ・フラスキーニ
イソッタ・フラスキーニ・
ティーポ6-C
TBC
A.ガルシア
J-K.ベルネイ
MI
7
12
HYPERCAR
ハーツ・チーム・JOTA
ポルシェ963
W.スティーブンス
TBC
TBC
MI
8
15
HYPERCAR
BMW MチームWRT
BMW MハイブリッドV8
D.ファントール
TBC
TBC
MI
9
20
HYPERCAR
BMW MチームWRT
BMW MハイブリッドV8
S.ファン・デル・リンデ
TBC
TBC
MI
10
35
HYPERCAR
アルピーヌ・エンデュランス・チーム
アルピーヌA424
M.バキシビエール
TBC
TBC
MI
11
36
HYPERCAR
アルピーヌ・エンデュランス・チーム
アルピーヌA424
N.ラピエール
TBC
TBC
MI
12
38
HYPERCAR
ハーツ・チーム・JOTA
ポルシェ963
O.ラスムッセン
TBC
TBC
MI
13
50
HYPERCAR
フェラーリ・AFコルセ
フェラーリ499P
A.フォコ
TBC
TBC
MI
14
51
HYPERCAR
フェラーリ・AFコルセ
フェラーリ499P
A.ピエール・グイディ
TBC
TBC
MI
15
63
HYPERCAR
ランボルギーニ・
アイアン・リンクス
ランボルギーニSC63
M.ボルトロッティ
TBC
TBC
MI
16
83
HYPERCAR
AFコルセ
フェラーリ499P
R.クビサ
TBC
TBC
MI
17
93
HYPERCAR
プジョー・トタルエナジーズ
プジョー9X8
P.ディ・レスタ
TBC
TBC
MI
18
94
HYPERCAR
プジョー・トタルエナジーズ
プジョー9X8
L.デュバル
TBC
TBC
MI
19
99
HYPERCAR
プロトン・コンペティション
ポルシェ963
H.ティンクネル
TBC
TBC
MI
20
27
LMGT3
ハート・オブ・レーシングチーム
アストンマーティン・
バンテージGT3
I.ジェームズ
TBC
TBC
GY
21
31
LMGT3
チームWRT
BMW M4 GT3
TBC
TBC
A.ファーフス
GY
22
46
LMGT3
チームWRT
BMW M4 GT3
TBC
V.ロッシ
TBC
GY
23
54
LMGT3
ビスタ・AFコルセ
フェラーリ296 GT3
T.フロー
F.カステラッチ
D.リゴン
GY
24
55
LMGT3
ビスタ・AFコルセ
フェラーリ296 GT3
F.エリオ
S.マン
A.ロベラ
GY
25
59
LMGT3
ユナイテッド・オートスポーツ
マクラーレン720S GT3エボ
TBC
TBC
G.ソーシー
GY
26
60
LMGT3
アイアン・リンクス
ランボルギーニ・
ウラカンGT3エボ2
C.スキアボーニ
TBC
TBC
GY
27
77
LMGT3
プロトン・コンペティション
フォードGT GT3
TBC
TBC
B.バーカー
GY
28
78
LMGT3
アコーディスASPチーム
レクサスRC F GT3
TBC
TBC
K.ファン・デル・リンデ
GY
29
81
LMGT3
TFスポーツ
シボレー・コルベットZ06 GT3.R
TBC
TBC
C.イーストウッド
GY
30
82
LMGT3
TFスポーツ
シボレー・コルベットZ06 GT3.R
TBC
TBC
D.ジュンカデラ
GY
31
85
LMGT3
アイアン・デイムス
ランボルギーニ・
ウラカンGT3エボ2
TBC
TBC
M.ガッティン
GY
32
87
LMGT3
アコーディスASPチーム
レクサスRC F GT3
TBC
TBC
J-M.ロペス
GY
33
88
LMGT3
プロトン・コンペティション
フォードGT GT3
R.ハードウィック
TBC
TBC
GY
34
91
LMGT3
マンタイEMA
ポルシェ911 GT3 R
TBC
TBC
R.リエツ
GY
35
92
LMGT3
マンタイ・ピュアレクシング
ポルシェ911 GT3 R
A.マリキン
J.シュトーム
K.バハラー
GY
36
95
LMGT3
ユナイテッド・オートスポーツ
マクラーレン720S GT3エボ
TBC
佐藤万璃音
TBC
GY
37
777
LMGT3
Dステーション・レーシング
アストンマーティン・
バンテージGT3
TBC
TBC
M.ソーレンセン
GY