J1参入プレーオフ決勝で思い出す31年前の激闘/六川亨の日本サッカーの歩み

J1最後の椅子はオリジナル10対決に[写真:©超ワールドサッカー]

Jリーグは大詰めを迎え、先週末は各地でドラマが生まれた。まずはホームのノエスタで神戸が名古屋を2-1と下して悲願の初優勝を達成した。FW大迫勇也はこの日も2アシストで勝利に貢献。間違いなく今シーズンのMVPだろう。

そして残留争いでは湘南が横浜FCを1-0で退けG大阪とともに残留を確定。柏は鳥栖と2-2で引分けたため17位に降格したことで、最終戦に●で横浜FCが○だと勝点で並ばれるものの、得失点差では12点のアドバンテージがあるためかなり有利な状況と言える。

J2に目を向けると、J3の2位チームはいずれもライセンスを交付されている可能性が高くなったため、昇格に支障はない。そこでJ2を21位で終えた大宮のJ3降格が正式に決定した。

これとは逆のパターンで救われたのがJ3最下位の北九州だった。本来ならJFL2位のチームと入替戦だったが、最終戦の結果首位はHonda FCが「アマチュアの門番」として復活し、2位には6年ぶりに復帰した浦安が食い込んだ。しかし浦安は、練習グラウンドこそあるものの、観客席はメインとバックに申し訳程度にあるだけ。屋根や照明設備もないため、ライセンス取得のためには試合会場の確保が喫緊の課題となるだろう。ライセンスを持たない浦安が2位に浮上したことで、北九州は降格を免れたというわけだ。

さてJ2の残る昇格争いは東京Vと清水の「オリジナル10」対決となった。日時は12月2日14時より、“聖地"国立競技場で開催される。千葉との準決勝でも味の素スタジアムには2万5千を超えるファン・サポーターが集結しただけに、果たして何万人が入るのかも楽しみである。

そして国立競技場でのヴェルディ対エスパルスと言えば、92年のナビスコカップ決勝を思い出す。Jリーグの開幕を翌年に控えたプレ大会として創設された、今日まで続く伝統のあるリーグカップ戦である。

参加チームは「オリジナル10」で、総当たりリーグ戦の結果、上位4チームが決勝トーナメントに進出する。リーグ戦でも90分で決着がつかない場合は延長Vゴール方式、さらにはPK戦(1人目からサドンデス)まで導入された。予選リーグをヴェルディ川崎が首位で突破したのは予想通りとして、意外だったのは鹿島が4位に食い込んだことだった。

ジーコ・イズムが浸透してきたようで、長崎県立総合運動公園で行われた横浜フリューゲルス戦では怒りを爆発させていた。というのも当時のレギュレーションは、勝者に勝点4が与えられた他に、勝者にも敗者にも90分間で2ゴールを決めるたびに勝点1が付与された。より攻撃的なサッカーでファンを取り込もうというJリーグ側の姿勢の表れだった。

それなのに前半で鹿島がリードすると、攻撃の手を緩めてしまった。ジーコにすればレギュレーションを「知っているのか」とハーフタイムにチームメイトを鼓舞したらしい。結果は4-2の勝利で、鹿島はグループリーグで最多得点をマークした。

国立での準決勝はヴェルディが1-0で鹿島を下して決勝に進出。もう1つのカードは草薙陸上競技場で清水が名古屋を1-0で倒して決勝戦に勝ち進んだ。両者の激突は11月23日の国立競技場だった。三浦泰年と三浦知良の兄弟対決としても話題を呼んだ一戦に、国立競技場には5万6千人の大観衆が集まった。

清水には、ヴェルディから移籍した三浦泰と堀池巧の他にも、横浜Mから移籍した長谷川健太に加え、澤登正朗、向島健といった地元出身の選手がチームの主軸となって人気を集めていた。対するヴェルディもラモス瑠偉、ペレイラ、加藤久、柱谷哲二、都並敏史、武田修宏ら代表クラスをずらりと揃えた豪華な布陣だった。

試合は拮抗した展開が続いたものの、後半12分にキング・カズのゴールでヴェルディが先制する。結局この1点が決勝点となり、ヴェルディが初代王者に君臨し、カズは通算10ゴールで得点王とMVPの称号も手に入れた。

ちなみに翌年のナビスコカップ決勝も同じ顔合わせで、清水が大榎克己のゴールで先制するも、ビスマルクと北澤豪の連続ゴールで1-2と逆転負けを喫し、2年連続してランナーズアップに甘んじた。

あれから30年が過ぎ、大会こそ違うものの両雄が再び国立競技場で激突する。優勝争いと同じくらい、もしかしたらそれ以上の緊迫感が国立競技場に漂うかもしれない。


【文・六川亨】

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