事件記録は「国民共有の財産」 最高裁が新規則 特別保存の要望は誰でも可能に

最高裁判所=東京都千代田区

 1997年の神戸連続児童殺傷事件など、各地で重大少年事件の記録が事実上の永久保存「特別保存」とされず廃棄されていた問題で、最高裁は27日、記録を「国民共有の財産」とする理念規定を掲げた新たな規則を制定したと明らかにした。問題を受け、5月に公表した調査報告書に基づく初の具体的な再発防止策で、裁判所に対する特別保存の要望は誰でも行えるなどと改めた。

 また、少年事件や民事裁判の記録を廃棄する過程では、各裁判所の所長の関与を明確化し、所長の認可を必ず受けるよう運用を変更した。また規則には、法律や公文書管理の専門家ら6人でつくる第三者委員会の常設も盛り込んだ。要望に対して裁判所が特別保存としない場合は、第三者委に意見を求めるとし、保存の必要性を二重でチェックすると定めた。

 最高裁はこれらによって、国民共有の財産である歴史的、社会的意義を有する記録を適切に保存する基本的な仕組みを構築したと説明。新規則などは来年1月30日から施行される。施行日までに、特別保存の認定プロセスなど、詳細な運用を全国の裁判所に通知するとしている。

 最高裁の堀田真哉事務総長は「裁判所全体で記録の保存の適切な運用が確保されるよう取り組んでいきたい」とコメントを出した。

 一連の記録廃棄問題では、事件記録が膨大となり各裁判所の記録庫が逼迫している実態が浮き彫りとなった。問題が発覚した昨年10月以降、全国の裁判所では事件記録の廃棄を「中断」したままだが、最高裁の担当者は、廃棄を再開する時期は「未定」としている。

 最高裁は昨年11月以降、全国36家裁、支部の少年事件や民事裁判の計約100件を調査。今年5月の調査報告書では、保管スペース不足などを理由に最高裁が各裁判所に記録廃棄を促すといった不適切な対応があったと認めて幹部が謝罪していた。(末吉佳希) 【裁判所の記録廃棄問題】1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件など、重大な少年事件の記録が各地の家裁で廃棄されていた問題。成人の刑事裁判と異なり少年審判は非公開で、事件記録が失われると審議過程が検証できなくなる。一般的な少年事件の記録は、保存期間が内規で原則「少年が26歳に達するまで」と定められ、それを過ぎると廃棄される。ただし、最高裁は、史料的価値の高い記録などは特別保存(永久保存)するよう定めていた。

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