棟方志功記念館(青森市)、建物と庭残し利活用 知事と青森市長が検討へ 閉館後も顕彰施設に

棟方志功記念館の展示室を視察する宮下知事(左)と西市長=28日午前9時4分、青森市松原2丁目

 施設の老朽化などを理由に来年3月末の閉館が決まっている青森市の棟方志功記念館について、宮下宗一郎知事と同市の西秀記市長は28日、閉館後も世界的板画家の棟方を顕彰する施設として、建物と日本庭園を残す形で利活用を検討する方針を示した。両者が同日の記念館視察後、報道陣の質問に答えた。

 記念館の運営は県が補助金を拠出する一般財団法人「棟方志功記念館」(理事長・小野次郎館長)が担い、青森市は土地所有者の立場。閉館を巡っては、存続を求める市民有志らが今年5月から署名活動を展開し、西市長も建物の利活用を含めた協議を県に呼びかける方針を示していた。

 宮下知事と西市長は記念館の営業時間前の約30分間、小野館長の案内で展示室や収蔵庫、庭園を視察。報道陣に閉館後の在り方を問われた宮下知事は「庭も建物も残る方向で検討し、何らかの形で棟方を顕彰できるようにしたい。市にとっても県にとっても素晴らしい方向性だ」と明言した。

 西市長も建物や庭園の利活用を検討する方針に同調し、「まずは老朽化の度合いを調べ、バリアフリー化もきちんとしなくてはいけない。調査から始めて、総額でどれぐらいかかるのかを試算したい」と述べた。

 両者とも、財源や今後の具体的なスケジュールについては明かさなかった。

 一方、小野館長は「(一般財団法人の)役員会で決まった方向で動いており、それを進めるだけ」と、予定通り来年3月末の閉館を強調。建物と庭が残る可能性が浮上したことについては「記念館(の建物や庭)がすぐになくならず、残されるというのであれば、ありがたいこと」と語った。

 「棟方志功記念館存続署名の会」の中村節雄会長代理は東奥日報の取材に「閉館ではなく、いったん休館という形にして今後の在り方を検討するべきだと思う」と複雑な胸の内を明かしつつ、「建物も残すのであれば、版画教室に使うなど棟方のスピリッツを継ぐ形にしてほしい」と注文をつけた。

 同会によると、署名はいったん締め切った8月末の1万6891筆から増え続けており、年内に関係者に提出する予定。

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