コールセンター、青森・弘前市に熱視線 県内進出数、人口比でトップ 低い災害リスク、求人倍率

市主催の就職セミナーで企業担当者の話に耳を傾ける求職者たち

 首都圏や西日本のコールセンター業者が青森県弘前市に熱視線を送っている。2018年ごろから進出が本格化。県によると、22年度までの5年間の進出業者数は県内市町村の中で、人口比では弘前市がトップだ。市は雇用の受け皿としてコールセンター業を重視しており、誘致や就職支援に力を入れている。

 10日、弘前市駅前のヒロロで開かれた市主催のコールセンター業就職セミナーには、職を求める16人の参加者が集まった。セミナーでは参加企業の担当者が「初めてでも安心」「シフト制で自由な働き方ができる」と自社の魅力をアピールしていた。

 県産業立地推進課によると、18~22年度に県外企業計69社が青森県に進出し、うち約半数の34社がコールセンターだった。弘前市は青森市(12社)に次ぐ11社を受け入れてきた。

 弘前市にコールセンターが集まる背景には、ある程度の人口集積があり一定の求職者を確保できる見込みがあるためだが、それだけではないという。

 人材派遣や業務代行サービスなどで近年急成長している「グロップ」(本社岡山市)は、岡山県と愛媛県にコールセンターを持っていたが、19年7月に弘前市にも進出した。

 同社の渡邉昌樹・テレマーケティング事業部長によると、転機は18年の西日本豪雨。渡邉さんは当時、被害が集中した岡山にいた。

 「被害当日はコールセンター内が腰の辺りまで水に漬かった」。浸水により、パソコンや電話が全て使えなくなり、2週間営業を停止した。同業他社には復旧に1カ月かかったところもあった。

 国内で拠点を分散させてリスクを減らす戦略の中で、弘前市は青森市に比べると降雪量が少なく、海から遠いため津波などの大規模災害のリスクも低い。こうした点が同社の目に魅力的に映ったという。

 企業が地方に進出する際のメリットは、一般的に首都圏に比べ賃金が安いことが大きな要素となっている。

 弘前公共職業安定所によると、管内の事務従事者(コールセンター業含む)の平均賃金は18万5千~16万円。一方、東京は27万2千~21万4千円。ある企業の担当者は取材に対し「進出の際は賃金水準も考慮した」と打ち明けた。

 求人を争うライバル企業も少ない。22年度の有効求人倍率は東京都が1.60(原数値)、弘前管内が1.23(同)で、首都圏に比べればまだ採用しやすい環境にある。

 そのような中、弘前市にとっては積み上げてきた受け入れ実績が強み。物件探しの手伝いやオフィス賃料の補助などを通し、強く企業側にアピールしている。市によると、企業側からは「弘前市民は忍耐強く向いている」との声が寄せられているといい、進出企業がオフィスを増やす動きもあるという。

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