上北自動車道(青森県)、全通1年 救急、物流の利便性向上 並行区間の交通量「影響まだ」

全線開通から1年がたった上北自動車道。写真手前が七戸北インターチェンジ方面(青森方面)、奥が七戸インターチェンジ方面(八戸方面)

 青森県六戸町から七戸町までを結ぶ「上北自動車道」(約24キロ)が27日、全線開通から1年を迎えた。同自動車道経由での青森、八戸両都市間の交通アクセスが向上し、消防関係者や物流業者からは「救急搬送で有効活用している」「配送時間に余裕ができた」などの声が聞かれる。一方で並行区間の国道4号の交通量が将来的に減少するとの試算から、周辺のにぎわいの変化を懸念する見方もあるが、現時点で具体的な影響は明らかになっていない。

 同自動車道の最終区間・天間林道路は昨年11月27日に開通、七戸北インターチェンジ(IC)が新設された。

 七戸、東北両町を管轄する中部上北広域事業組合消防本部の予防課担当者は、みちのく有料道路での交通事故発生時や東北町北部からの救急搬送時に救急車両が七戸北ICを活用していると説明。「七戸北、七戸、東北、上北と、四つのICが管内に満遍なく配置され、利便性が高まった」と全線開通の効果を語る。

 物流業者にとっても走行時間短縮の効果は大きい。ヤマト運輸青森法人営業支店の工藤博照支店長は「青森市の拠点から八戸市方面に配送する際の時間に余裕ができた」と話す。

 同社は青森空港から西日本や海外に県産農水産物を届ける物流サービス「A!Premium(エープレミアム)」を展開。大雪などで国道4号が通行止めとなった場合に同自動車道を活用することで配送が遅れるリスクを軽減できるとし「八戸方面から空港に荷物を運ぶ際にも安心してトラックを出せる」と言う。

 六戸・三沢ICに近い金矢工業団地(六戸町)について、県産業立地推進課の担当者は「県内外の企業から分譲に関する相談が増えている印象はある」。全線開通でアクセスが向上したことを企業訪問時にPRしており「分譲促進につながってほしい」と期待する。

 青森河川国道事務所の試算では、国道4号の2010年の1日当たり利用台数は約1万8千台だったが、上北自動車道に利用者が移る影響もあり、30年には約1万台に減る見通し。

 国道4号沿いに立地する「道の駅しちのへ」(七戸町)は新型コロナウイルス禍を経て、昨年よりも客数が増加しているという。同駅を運営する七戸物産協会の盛田隆造社長は「国道4号の交通量は減っていない気がする」としつつ「将来的には上北自動車道を使う人が増えてくると思う。道の駅に寄ってもらえるよう誘客対策を検討しないといけない」と語った。

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上北自動車道 六戸町-七戸町間の自動車専用道路。国土交通省が3区間に分けて整備、2013年3月に上北道路(六戸JCT-上北IC、7.7キロ)、19年3月に上北天間林道路(上北IC-七戸IC、7.8キロ)、22年11月に天間林道路(七戸IC-七戸北IC、8.3キロ)がそれぞれ開通した。青森-八戸間の所要時間は、同自動車道整備前の国道45号などを利用した場合と比較して30分ほど短縮され、最短で約1時間半となった。

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