<現地取材>レイラック滋賀FC、Jリーグ入れ替え戦出場間近で…残り10分で溢れた昇格への夢

11月26日に行われたJFL第30節。試合開始前の時点で2位に付けていたレイラック滋賀FCは、Jリーグへの参入に向けたライセンスが審議中の状態だった。

ただ、少なくともJFLで2位以内に入らなければ参入の可能性はゼロになる。もしJ3ライセンスがこのあと認められれば、ギラヴァンツ北九州との入れ替え戦に出場することができる。しかし3位以下ならそれもない。

レイラック滋賀FCは、この試合で勝利して2位を守ることが至上命題だった。

昨季はJFL最下位となり、奈良クラブとFC大阪の2チームがJ3へと昇格しなければ地域リーグに降格していたMIOびわこ滋賀。そのクラブが名前を変えてレイラック滋賀FCとなり、それからわずか1年でJリーグが手に届くところまで急成長。

そのシンデレラストーリーをハッピーエンドで締めくくるために、このヴィアティン三重戦はなんとしても勝たなければいけなかった。

思い通りの序盤だった、が…

プレッシャーがかかる状況ながら、レイラック滋賀FCはこの試合で素晴らしいスタートを切る。

前半5分に平尾壮のコーナーキックから平井駿助がヘディングを決め、先制点を奪取。クラブが得意としてきたセットプレーからリードを奪う。

さらに前半15分には海口彦太のシュートをゴールキーパーが弾いたところを、ペナルティーエリア右隅に詰めた角田駿が押し込む。2019年からチームに所属してきたMIO時代を知る選手が、J参入への夢をつなぐゴールを決めた。

ここまでは、まさにレイラック滋賀FCの思い通りの試合だった。

だが29分、ヴィアティン三重の田村翔太が飛び出しから1点を返し、スコアは1-2に。レイラック滋賀FCは1点差に詰め寄られてハーフタイムを迎える。

後半には反撃を狙うヴィアティン三重、それをしのぎながらカウンターを仕掛けるレイラック滋賀FCと激しい一進一退の展開となる。

そして試合を動かしたのは85分、ヴィアティン三重が波状攻撃のなかでPKを獲得すると、それを大竹将吾が決めて2-2に。

この後レイラック滋賀FCはなんとか勝ち越しを狙って攻め込み、最後のフリーキックではゴールキーパーの伊東倖希も相手ペナルティーエリアまで上がって圧力をかけるも…最後まで得点は生まれなかった。

試合はアディショナルタイム5分を過ぎて2-2。主審がホイッスルを吹いた瞬間、レイラック滋賀FCはブリオベッカ浦安に追い抜かれて3位に転落。Jリーグ参入への希望は夢と消えた。

「樋口監督の前で勝ちたかった」

試合後の記者会見では、9月からレイラック滋賀FCを率いてチームを復活させた菊池利三監督が以下のように話した。

――試合の統括は

まずはこのスタジアムの雰囲気を作っていただいたヴィアティン三重の関係者の方に感謝します。

そして、水色のユニフォームを着て我々を後押ししてくれた滋賀のサポーターが沢山来ていただいたところで、勝利を見せられなかったことが残念です。

試合は立ち上がりから狙い通りでした。それで2-0というところまで持っていくことができましたが、そこから3点目が取れなかった。

試合の流れとして2-0のまま前半を終える、あるいは最後まで2-1で終われるかどうかが少しもったいなかったなと。

失点の仕方も田村選手のすごくいい裏抜けからで、警戒しているところをやられてしまった。それは少しトレーニングの不足が出てしまった。

ただ後半には『受けずに戦う』というところは体現してくれましたし、不運な形でPKは取られましたけど、そこは審判がジャッジするところです。

流れの中からは1失点しかしていないということに関して言えば、選手たちは本当によくやってくれました。

今日このピッチに連れてきた18人の選手が、我々らしさを体現してくれたかなと思います。みんな本当に1年間よく戦ってくれたと思います。

――激動のシーズンを振り返って

滋賀という場所でJリーグ参入を目指すというところでチームに加入させていただいて、選手たちが開幕戦からすごく成長してくれたシーズンでした。

最後の最後、2-0というところからの試合の終わらせ方、時間の使い方というところは少し自分に足りないところだったかなと思います。

個人的なことですが、自分がS級ライセンスを受講していたとき、横浜F・マリノスでの研修で対応してくださったのが今三重の監督である樋口靖洋さんだったんです。

思い入れのある監督さんです。当時あの場に私がいたことは、樋口さんは分からなかったと思うんですけれども。

樋口さんからは少なからず色々なものを吸収させていただきました。そういう意味では自分の個人的な成長も見せたかった、なんとか勝って終わりたかった。

ただプロスポーツは相手あってのものですし、相手も我々以上の気迫で最後にゴールへと迫ってきたところは本当に素晴らしかったと思います。

「簡単に感謝とは言えないが、感謝という言葉に尽きる」

――レイラック滋賀FCは今季の終盤で急激にファンが増えました

どこのチームも同じだと思いますが、サッカー選手である以上は、ファンに見られて、沢山の人から応援されて成り立つものです。

一人でも多くの人たちにプレーを見てもらえる。それは本当に素晴らしいことで、自分たちの動きやプレーが人の心を動かしているという証明だと思います。

ホームでも2000人を超えるサポーターが我々を応援してくださいましたし、今日もゴール裏を埋め尽くすくらいの応援をいただきました。

本当にありがたいです。感謝しかないです。簡単に『感謝』という言葉を口に出すことはできないと思うんですけども、それに尽きます。

――終了後の円陣で選手に何を伝えた?

入れ替え戦も含めてあと2週間全員で戦うという点を共有しながら日々切磋琢磨してきたんですけど、ここで終わらせることになってしまったことは本当に申し訳なかったと。

J3に上がるというところをみんなで共有してきたんですけども、そこに関しては私の問題もあります。そういったことをお話させていただきました。

チームが40人以上と多い中で、このピッチに立った18人も、立てなかった選手たちも、本当に100%の力を出してくれたと思います。

そういう意味では、選手には「胸を張って」「よくやってくれた」という言い方をさせていただきました。

9月に監督を引き受けさせてもらった時の状況、そして今の状況というのは色々な方が評価するものではありますけれども、チームとすればいい方向には行っていたかなと思います。

それは私の力ではなく、選手たちが本気で毎日取り組んだ結果だと思います。最後はスルッとこぼれ落ちてしまったものがあるかもしれませんが、選手の成長が見られたことは嬉しいです。

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残り1試合、残り10分でJリーグ参入という夢にたどり着けなかったレイラック滋賀FC。しかし今季の急成長はまさに劇的なもので、それに従ってファンも増加した。

さらに彦根市との協力の下、新設された平和堂HATOスタジアムを来季使用できる可能性も高まっているという。

おそらく今季は前半戦の段階では「J昇格」を想定すらしていなかっただろう。来季からはプレシーズンから2位以内を目指すための準備を行って臨むことになる。それはレイラック滋賀FCにとって大きな成長であったといえる。

果たして来季はどのようなシーズンを過ごすのか。多くのファンがその動向に注目することになるだろう。

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