IRいしかわ鉄道、金沢以西を引き継ぎ「経営厳しくなる」 七野利明社長、イベント列車でハピラインふくいと連携へ

「ハピラインふくいとイベント列車運行などに取り組んでいきたい」と語るIRいしかわ鉄道の七野利明社長=石川県金沢市の同社
IRいしかわ鉄道の普通列車=石川県金沢市の東金沢駅

 2015年の北陸新幹線金沢開業時にJR北陸線の石川県区間を引き継いだIRいしかわ鉄道(本社石川県金沢市)は、来年3月の敦賀開業に伴い、新たに金沢から福井県境までの約51キロをJR西日本から引き継ぐ。金沢以西は、1キロ当たりの1日平均乗客数「輸送密度」が9668人と、金沢以東の7割にとどまる。七野利明社長は「経営は非常に厳しくなる」と今後の見通しに危機感を示し、イベント列車運行などでハピラインふくいとの連携にも力を注ぐ考えだ。

⇒【特集】第三セクター「ハピラインふくい」の展望や課題は

 

 ――開業以来、利便性向上に向けた取り組みは。

 「今年6月に累計利用者7千万人を達成した際には通常より割安の300円の1日フリーきっぷを販売したり、10月に開かれた『いしかわ百万石文化祭』に合わせて北陸鉄道(金沢市)と連携した1日フリーきっぷを販売したりするなど、ガリバー企業のJR時代と違って、小回りを利かせて臨機応変にさまざまな企画を打ってきた」

 ――今後の経営見通しについて。

 「敦賀延伸後10年間で累計42億円の赤字を見込み、延伸以降5年目まではJR運賃から平均9%、6年目以降は14%の運賃引き上げを予定している。乗り継ぎが不便にならないよう金沢以東と以西を走る列車を同じホームで乗り換えられるような配慮や多機能型券売機の導入、運行情報システムの整備などで、柱となる旅客収入を確保していきたい」

 ――北陸3県の並行在来線会社の連携については。

 「3県が特性を生かしつつ、利用者の利便性につなげていくのは当然だ。10月にあいの風とやま鉄道(本社富山県富山市)と協力し、自転車をそのまま車内に持ち込めるサイクルトレインの実証運行を行ったが、ハピラインとも同様にイベント列車運行などに取り組んでいきたい」

 ――福井―金沢間で快速列車の運行を求める声も福井県内では聞かれる。

 「組織や業務の効率化を追求する中で、保有車両や乗務員はぎりぎりの範囲で運営しており、さらに快速列車を走らせるとなると運用が難しい。また快速列車を優先して普通列車の待機時間が長くなると利便性低下にもつながりかねない」

 ――将来的な3県の並行在来線運営会社の一体化については。

 「統合すれば確かに効率的だとは思うが、一方で『ずうたい』が大きくなることで意思決定に時間を要し、小回りが利かなくなる弊害もある。3県の自治体による赤字補填の割合をどうするかなど課題は多い」

連載・北陸の並行在来線トップに聞く

 来年3月16日の北陸新幹線敦賀開業と同時にJR北陸線の福井県内区間は第三セクターのハピラインふくいに引き継がれる。並行在来線運営会社の先行事例となるIRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道の経営トップに、利便性向上に向けた取り組みや経営課題、3社連携の展望などを聞いた。

【上】IRいしかわ鉄道・七野利明社長 イベント列車で連携を

【下】あいの風とやま鉄道・日吉敏幸社長 運行本数増と発信が鍵

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