オーランドは遠くなりにけり/小林至博士のゴルフ余聞

「アーノルド・パーマー招待」が行われるベイヒルクラブ&ロッジ。数あるオーランドのゴルフ場でも際立つコース(撮影/桂川洋一)

この時期になると、アメリカに住んでいた頃を懐かしく思い出す。サンクスギビングデー(感謝祭)から始まるホリデーシーズンという、日本にはない特有の行事が続く時期だからかもしれない。

逆にその当時、年末年始が来ると日本に郷愁を感じたことを覚えている。アメリカにおける1月1日、すなわちNew Year Dayはホリデーシーズンの終焉(しゅうえん)。2日からはバリバリ働くのが通例だ。

特に思い出深いのは、20世紀最後の4年間を過ごしたフロリダ州オーランドである。ディズニー・ワールドやユニバーサル・スタジオを擁する世界有数の観光都市だ。北回帰線の少し上、日本で言えば沖縄の緯度と同じくらいで気候も似ている。

時々やってくる寒波に遭遇しなければ、この時期でも半袖、短パンで過ごすことができる。ハリケーンシーズンも終わり、日差しも穏やか、つまり絶好のゴルフシーズンの到来でもある。

オーランドは「アーノルド・パーマー招待」が開催されるベイ・ヒルGCなど、200を超えるゴルフ場がひしめき合い、多くのツアープロが居を構えるゴルフの名所でもある。かつてはタイガー・ウッズも住んでいた。

そんな快適な場所で冬を過ごしたいと、高緯度の大都市から富裕層を中心に大挙して時限移住してくる。いわゆるスノーバードだ。ニューヨーク、ワシントンDC、シカゴ、そしてカナダのトロントなど東海岸から五大湖沿岸には大都市が集中しているが、これらの都市では11月も半ばになるとゴルフプレーは厳しく、12月以降は冬将軍もやってきてほぼ不可能。温暖なフロリダに渡り鳥のように季節移住するというわけだ。

スノーバードがやってくる感謝祭ウイークを境に、グリーンフィーは急激に上がる。フロリダ半島の中部に位置するオーランドは灼熱(しゃくねつ)の太陽と落雷を伴う強烈なスコールに見舞われる6~8月が最安値で、メジャーリーグ(MLB)のキャンプが行われる2、3月が最高値になる。

私が住んでいた頃、閑散期との価格差は最大でも3倍程度だったが、当時よくプレーしたコースをいくつかチェックしてみたら4、5倍と格差は拡大している。理由はおそらくテレワークの最先端である米国でスノーバードが増加の一途をたどっていることと、アルゴリズムの発展で、需給予測に基づいた細かい料金設定(ダイナミックプライシング)が可能になったからだろう。

コロナ禍もあいまってオーランドには10年以上、訪れていない。私が住んでいた頃、100万人圏内だった人口は、最後に訪れた2013年には160万人、いまや210万人だというから、その変貌ぶりも見てみたい。

停滞ニッポンと成長アメリカ。円安もあいまって高いだろうなあと、エアとホテルの値段を調べると、ゲゲゲ。行くなら閑散期の夏かなあ。(小林至・桜美林大学教授)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン