離島に保育所を…「この島で私は子育てしたい」 母の思い 広島・三原市 佐木島

離島に保育所をつくってほしい…。三原市にある島に住んでいる女性の思いです。住民を中心に集めた署名を携えて、行政に開設へ向けた要望書を提出しました。

三原市の沖合にある離島「佐木島」です。
尾道市出身の滝田千陽さんは、5年ほど前にこの島に移住しました。かつて祖父や祖母の家があり、父親も島の中学校の教員として働いていました。

滝田千陽さん
「幼少のころに、ここに来てておじいちゃん、おばあちゃんと遊んだり島の人たちと接したり、この島の自然に触れ合ったりしてすごく良い場所だなと」

2021年、滝田さんは佐木島で働いている夫の守さんと結婚しことし1月、長男の洸ちゃんが生まれました。ただ、子育てには課題がありました。

島にはかつて鷺浦小学校の中に鷺浦幼稚園がありましたが、2017年から休園の状態が続いています。つまり、子育て施設が島にはないのです。そういった背景から、滝田さんは地域の役員が集まる会議で子育てサロンを提案しました。

地域住民がボランティアで協力し、10月から週に1回、洸ちゃんを預かったり、一緒に遊んだりして、地域で育てる環境が生まれています。保育所開設へ向けた動きも進み、8月から9月にかけて、署名活動が行われました。

地元住民の受け止めはどうだったのでしょうか。

地元の受け止めは?「島に保育園を」署名提出へ

RCC福山放送局 内田博文記者
「署名で保育園をつくりたいんだという要望を聞かれた時にどういう風に思われたんでしょうか」

鷺浦町内会長 山根宗光 さん
「やっぱり過疎化に拍車をかけてはいけないので、良い提案だと思います。若者が立ち上がってくれるというのは我々としては大変うれしいこと」

地域も滝田さんの願いにこたえ、人口およそ600人の島で、出身者を含めて543筆の署名が集まりました。

滝田千陽さん
「一緒に考えてほしい。島だからできる形、いまできることって何なんだろうと問いかけているのだと、私は思っているんです」

島には小学校があります。現在12人が在籍していますが、島外からの通学を認める特認校として、全員が島の外から通学していて、地元に児童はいません。高齢化率も70%を超えるなかで、新たな生活を築いていくには、乗り越えていかなければならない課題が多くありそうです。

27日、滝田さんたちは三原市役所を訪ねました。佐木島に保育施設の開設を求める要望書を、岡田吉弘 市長に手渡すためです。

滝田千陽さん
「島に移住してすごく島の方が温かくて、自然も豊かで、ここで私は暮らしたい、そして子育てしたいという思いがすごくありました。市長さんにも、市の方にも、私たちと一緒に考えていただきたい」

鷺浦町内会長・山根宗光さん
「今の小学校の部屋をどこか一つお借りして、資金的に大変だと思うから」

岡田吉弘 市長
「なかなか三原市も厳しい面がありまして、要望通り100%お応えすることは難しいが、どういうことができるか島民のみなさんと探っていく」

この日の議論は交わることなく、互いに理解を示す程度で終わりました。島の未来をどうつくっていくのか…。母親の思いを考えることは、地域を再生する糸口につながっているのかもしれません。

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