天然記念物ケナガネズミ 交通事故43件で過去最多 沖縄本島北部の県道で急増なぜ?

交通事故の治療後、森に放されたケナガネズミ。体長約30センチの成獣で、同じ30センチほどの尻尾がある=12日、東村高江(下地広也撮影)

 環境省やんばる自然保護官事務所は28日、世界自然遺産やんばるの森に生息する国指定天然記念物で絶滅危惧種の「ケナガネズミ」の交通事故の件数が20日時点で43件にのぼり、過去最悪だった昨年の41件を上回ったとホームページで発表した。

 ケナガネズミは沖縄、徳之島、奄美大島のみに生息する日本最大の野ネズミ。夜行性のため事故は夜間が多く、特に国頭村与那と安田を結ぶ県道2号で多発しているという。事務所の担当者は、子育て期間の12月はさらに活動が活発になるとして安全運転を呼びかけた。

 NPO法人どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆さんは、天敵マングースの防除による生存率の上昇と、近年はえさのドングリが豊作で個体数が増えていることが事故の増加にもつながっていると分析した。

 その上で「やんばるの森はほかの世界自然遺産登録地と比べても人の暮らしと近い。今後、車道両脇の木をロープなどでつなぎ、ケナガネズミが渡れるようにするオーバーパスなども検討していく必要がある」と語った。

 環境省は道路上で傷ついた動物を見かけた際の通報を呼びかけている。ことし4月に東村高江で起きたケナガネズミの事故では、迅速な通報や治療によって森に帰すことができた。

 この事故を通報した宮城秋乃さん(45)は「環境省などはロードキル対策が整わないうちに、車が増えることが確実な世界遺産登録を進めてきた。ロードキルにあった動物の治療を美談だけで終わらせてはいけない」と指摘した。

 傷ついた希少動物を見かけた場合の連絡先は自然保護官事務所、電話0980(50)1025、またはNPO法人どうぶつたちの病院沖縄、電話090(6857)8917。(北部報道部・松田駿太)

ケナガネズミの交通事故件数の推移

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