京都の紅葉真っ盛り、押し寄せる観光客に人手不足の影「需給バランスが崩れている」

京都駅前のバスターミナルで、清水寺方面へと向かうバスを待つ長蛇の列(15日午前9時50分、京都市下京区)

 京都市の観光が最もにぎわいを見せる秋の紅葉シーズン。新型コロナウイルス感染症の位置付けが「5類」に移行して初めて迎える観光需要期で、早くもホテルや飲食店はインバウンド(訪日客)などで活況を呈している。ただ、同時に深刻化するのが業界の人手不足だ。次々に押し寄せる人たちをどのように受け入れ、市民生活への影響を最小限に抑えるか、正念場を迎えている。

 市内のモミジが色づき始めた11月中旬の平日。世界遺産の清水寺(京都市東山区)に続く参道には、大混雑で身動きが取れなくなる観光客の姿があった。嵐山(右京区)でも複数の団体ツアー客が歩道や竹林の道を埋め尽くし、福岡県から親子連れで訪れた会社員女性(44)は「市内は移動がたいへん。市バスに乗るのも長蛇の列だった」とこぼした。

 ホテル・旅館業界は活気づく。コロナ禍の期間に開業した外資系ホテルの担当者は「稼働状況は好調で、中国からも個人客の予約が多く入っている」と胸をなで下ろす。著しいのが宿泊単価の伸びだ。市観光協会の調査によると、主要ホテルの平均客室単価は9月時点で1万6179円だった。19年同月比を22.8%上回り、10カ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。円安による旺盛なインバウンド消費の影響もあるとみられる。

 活況なのは京都市内だけではない。舟屋で知られる京都府北部の伊根町では昨秋以降、訪日客のバスツアーが大幅に増加している。同町観光協会は「台湾などを中心に訪日客はコロナ禍前より確実に増えた。地域経済にもたらす影響は大きい」と受け止める。

 だが観光需要の復活に対し、事業者の人手確保が追い付いていない。京都労働局によると、府内のパート従業員の有効求人倍率(常用的パート)は9月に全職種で1.0倍となり、求人数と求職数がきっ抗したものの、サービス業に限れば3.14倍と求人数が求職数を大幅に上回る状況だった。中でも接客・給仕や飲食物調理の分野は3500人近い求人があるのに対し、求職者は1千人余りで、切迫した状況という。

 京都労働局は「コロナ禍前から人手不足の水準が高い業種だったが、インバウンド需要などで人材獲得競争がさらに激化している」と指摘する。京都市内のホテル従業員も「コロナ禍前より少ない人員で増え続ける宿泊客に対応している」と明かす。

 タクシーの運転手不足も深刻で、業界大手エムケイホールディングス(京都市南区)の青木信明社長は「京都では車両の供給力が2~3割落ち込む中でインバウンドが戻り、需給のバランスが完全に崩れている。市民の配車希望にも応えられない状況だ」と嘆く。

 帝国データバンクの10月の調査では、非正規社員の人手不足を感じる企業の割合は飲食店で82.0%、旅館・ホテルで73.5%に達している。担当者は「労働人口の減少や時間外労働の上限規制などが重なり、観光関連業界で従業員数の増加は見込みにくい」とみている。

 

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