捨てられ、売れ残り…行き場のない猫、飼い主になって 神戸どうぶつ王国が保護猫と触れ合いスペース

展示されている保護猫を見守る飼育スタッフの桧山皐月さん=神戸市中央区港島南町7

 捨てられたり、ペットショップで売れ残ったりして行き場がなくなった猫の新しい飼い主探しに、神戸・ポートアイランドの「神戸どうぶつ王国」が取り組んでいる。民間団体が保護した猫と来園者が触れ合える機会を設け、一匹でも多くの命をつなぐ。環境省によると、動物園が保護猫の譲渡に関わるのは全国でも珍しいという。

■入り口多いが出口少ない

 犬や猫と触れ合える園内のスペース「ワンタッチ・ニャンタッチ」。計約30匹が走り回る一室に置かれたゲージの中で2匹の猫がじゃれ合っている。いずれも雌で、やんちゃな「そら」とおっとりした性格の「うみ」だ。販売用として生まれたが売れ残り、今はここで飼い主を待っている。

 飼育スタッフの桧山皐月さん(27)は「さまざまな理由で捨てられたり、流通に至らなかったりと保護への入り口は多い。けれど、新しい飼い主にたどり着くまでの出口は少ない」と打ち明ける。

 同園で動物の診察を担当する「エルザ動物医療センター」(姫路市)の愛玩動物看護師河口香織さん(43)は、動物保護に取り組むNPO法人「姫路キャンフェル」(同)で活動している。河口さんらからなかなか新しい飼い主が見つからない保護猫の現状を聞き、同園も9月から協力することにした。

 同法人から猫を預かり、環境に慣れて人前に出られるようになれば「ワンタッチ・ニャンタッチ」に置いたゲージで新しい飼い主を探すため展示される。ほかの猫や犬と相性がよければ、一緒に放すこともある。

■広がりを期待

 こうした取り組みに環境省の担当者は「大きい動物を展示する動物園で、保護猫を取り扱うという発想はなかなかない。けれど、ウサギやモルモットといった小動物と触れ合える動物園もあり、猫も親しまれるかも」とし、他の施設への広がりを期待する。

 同園では、長距離移動による猫へのストレスを考え、保護猫を引き取れるのは京阪神在住者に限る。希望者は同法人との打ち合わせなどを経て迎え入れることができ、すでに1匹が、来園者の下で新生活を送っているという。

 「保護猫の存在を知らない人たちにもアピールできる。いい家族に巡り合えるチャンスが広がる」と河口さん。桧山さんは「悲しい境遇の猫がたくさんいることを知ってもらいたい。そして、この子たちの今後が良い方向に向かってくれれば」と願う。

 神戸どうぶつ王国TEL078.302.8899、姫路キャンフェルTEL079.269.1115(門田晋一)

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