難病の歌手・アヤノさん(青森県黒石市)、熱唱で全国感動 テレビ番組でオーケストラと共演

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏で「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌唱するアヤノさん=8月2日、東京オペラシティコンサートホール(提供・テレビ朝日)
「スペシャルドリーマー賞」のトロフィーを手に笑顔を見せるアヤノさん

 難病と長年闘いながら音楽活動を続けている青森県黒石市の歌手アヤノ(本名益田彩乃)さん(38)がこのほど、テレビ朝日系番組「題名のない音楽会」の人気企画「オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響」に出演。8人の中から「最も熱い演奏」をした人に贈られる「スペシャルドリーマー賞」に選ばれた。アヤノさんは「曲に込めた思いが届いてうれしい」と喜んでいる。

 アヤノさんは青森明の星高校音楽科から東京音楽大学に進学。卒業を間近に控えた2008年2月、脚が腫れる症状に見舞われ、体内のリンパがスムーズに流れないリンパ浮腫の診断を受けた。

 将来を悲観し、精神的にバランスを崩した時期も。それでも病を受け入れながら前を向き、母親が自宅で開いている音楽教室で子どもたちを教えたり、学校や施設などでコンサートを開いたりして、歌声で生きる勇気を伝えてきた。18年に結婚し、長女を出産。子育てに奔走中で、病状も落ち着きを見せている。

 「オーケストラをバックに歌えたらどんなにいいだろう」。締め切り2日前、歌唱動画を一発撮りし番組に応募。忘れていた頃に選考パスの電話連絡を受けて歓喜したものの、6月下旬から7月中旬にかけてなぜか声が出せなくなり、直前には飛行機の遅延でリハーサルが見送られるトラブルもあった。

 だが、持ち前の明るさで乗り越え8月2日、新宿・東京オペラシティコンサートホールで公開収録のステージに立ち、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏でディズニー映画「リトル・マーメイド」の「パート・オブ・ユア・ワールド」を堂々披露。人間の世界で自由を享受するため、ひれの代わりの脚を渇望する人魚の思いに、自身の境遇を重ねた熱唱は会場に感動を巻き起こし、9月23日の放送後はインターネット上などで大きな反響を呼んだ。

 「自分で自分を決めつけてやらない理由を探し、可能性の扉を閉ざしてしまうのはもったいない。地方に暮らし、病気があり、子どもを持ちながらの普段の活動を認めてもらえたし、その思いを番組を通して、全国の多くの人に届けられたのがうれしかった」とアヤノさん。30日午前10時半から、黒石市のスポカルイン黒石で開かれる子育てひろば「ま~な」でミニコンサート(申し込み不要、入場無料)を開催。再び地元の身近な人々に音楽を届け続ける。

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