貧困に悩んだ元やんちゃ少年の恩返し 京都・南丹市に企業ふるさと納税で1千万寄付

企業版ふるさと納税で1千万円を寄付し、元担任の國府教育長(右)らと懇談する大内社長=南丹市役所

 京都府亀岡市大井町の運送会社「JTO物流」が企業版ふるさと納税で南丹市に1千万円を寄付した。大内誠社長(50)が同市八木町の貧しい家庭に生まれ「わがままざんまい、勉強をしたことがない」という生い立ちから「どんな家庭環境の子も希望を持てるように」と思いを込めた。市は放課後児童クラブの無線LAN整備や、吹奏楽部の楽器購入に使いたいという。

 大内さんは八木中学校時代「いたずらばかりのどうしようもない男」で、授業もさぼるため3年間担任だった國府常芳教育長が連日自宅を訪ねたという。勉強は全く分からなかったが、友人に教わって直前に詰め込み、農芸高に合格。だが、父が事業に失敗して食費にも事欠く中、学費の問題からすぐ退学した。

 同町の豆腐工場に就職し、セールスドライバーとして市場やスーパーを巡った。「弟は高校に行ってほしい。もういきっていられない」とスイッチが入り、夢中で働いた。30歳で独立し、丹波地域の食品配送の多くを担う会社に成長させ、兵庫県丹波篠山市や石川県にも営業所を構える。

 経営が軌道に乗って「やんちゃした分、地域に恩返ししたい」と考えていた中、企業版ふるさと納税の制度を知り、南丹市へ「教育に使ってほしい」として寄付をした。

 11月17日に市役所で感謝状が贈られ、西村良平市長は「大変ありがたい。子どもたちに経験を話してほしい」と感謝した。國府教育長は手を焼かされた教え子の成長に「涙が出るほどうれしい。人の嫌がる悪さはせず、皆に好かれる生徒だったので筋は一緒」と喜んだ。

 寄付を財源に、吹奏楽部の楽器購入(320万円)、放課後児童クラブの無線LAN整備(90万円)が新規事業として行われ、残額は小中学校のコンピューター室を個別学習用の部屋に改装する事業に充てられる予定。

 大内さんは「本気になれば、誰にでもチャンスはある。勉強して視野を広げてほしい」と子どもたちにエールを送り「制度を使い、故郷に寄付する経営者が増える突破口になれば」と期待した。

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