生命誌提唱の名誉館長「生物に下等も高等もない」 地球環境の殿堂表彰

中村さんが生物多様性について語った講演(京都市左京区・国立京都国際会館)

 地球環境の保全に貢献した人々をたたえる「第14回KYOTO地球環境の殿堂」の表彰記念講演が、京都市左京区の国立京都国際会館であった。新たに殿堂入りしたJT生命誌研究館の名誉館長中村桂子さん(87)が「あらゆる生き物が40億年の歴史をもって生きており、下等も高等もない」と生物多様性に関する持論を語った。

 中村さんは生き物の歴史と生態系を結びつけて生命科学を考える「生命誌」という新たな分野を提唱したことで知られる。

 11月18日に講演した中村さんは、人類は地球上の生物における一つの種に過ぎないといい、「生物多様性について『何とかせねば』と上から目線で考えがちだが『中から目線』が重要」と指摘した。

 また、戦争が絶えない近年の国際情勢を踏まえ、「人類はみんなアフリカから生まれて広がった。共感力を持って世界中の人の顔を思い浮かべると戦いという答えは出ない」と断じた。

 ともに殿堂入りしたフランスの庭師ジル・クレマンさん(80)もビデオメッセージを寄せ、「日本では奥山と里山が分けられ人間と自然の良いバランスが考慮されている」と日本人と自然の関わり方を評価した。

 地球環境の殿堂は京都府や京都市、京都商工会議所などが2009年度に創設し、11月18日に式典などがあった。これまでに個人33人と1団体が殿堂入りしている。

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