タイのドライバー3人がスーパー耐久最終戦を完走。来季はチーム・タイランドでの参戦を検討

 11月11~12日、静岡県の富士スピードウェイで行われたENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE第7戦『S耐ファイナル 富士4時間レース with フジニックフェス』。このシリーズ最終戦では、3人のタイ出身ドライバーがST-Zクラスにスポット参戦をしていた。今回はトヨタGRスープラGT4 EVOで参戦するTeam Noahから、チームのBドライバー蘇武喜和とともに4人で富士4時間レースを戦った。

 今大会でスーパー耐久初出走を果たしたのは、2017~2019年までスーパーGTのGT300クラスにチーム・タイランドからフル参戦していたナタウッド・ジャルーンスルカワッタナとナタポン・ホートンカムのふたりに、2015~2023年までニュルブルクリンク24時間に参戦を続けているグランツ・スパポンを加えた3人だ。

 スーパー耐久に突如として現れたこの3人。まずはチーム・タイランドのメンバーとして帯同していた千葉健太郎マネージャーに今回のスポット参戦の経緯を訊いた。

「我々は、ドイツのニュルブルクリンクやタイで行われているレース(タイランド・スーパーシリーズ)などを戦っていて、2020年まではスーパーGTにも参戦させていただいていました。ですがそのスーパーGTは新型コロナウイルス感染拡大の影響で参戦できなくなってしまいました。それでもニュルブルクリンク24時間レースにはトヨタカローラ・アルティスでSP-3クラスに参戦を続けて、2020~2023年で4連勝を上げることができました」

2020スーパーGT第3戦鈴鹿 arto Ping An Team Thailand

「そしてニュルブルクリンクでの勝利を(トヨタ自動車)豊田章男会長に報告した際、『日本のレースにも出ましょう』というお話をいただきました。それから各シリーズのカレンダーを照らし合わせて、今回縁あって機会を得られたのがこのスーパー耐久でした」と、今回3人のドライバーが参戦することになったいきさつを明かしてくれた。

 迎えたレースウィークは、10日(金)と11日(土)午前中の専有走行はあいにくの雨となってしまい、マシンやコースについてうまく習熟を進められず。コースのところどころで雨の降るなかで挑んだ予選では、AドライバーのナタウッドとBドライバーの蘇武の合算タイムによりクラス6番手グリッドを獲得した。

2023スーパー耐久第7戦富士 Team Noah GR Supra GT4(N.ジャルーンスルカワッタナ/蘇武喜和/N.ホートンカム/S.グラント)

 GT4マシンでレースをするのは初めてだというAドライバーのナタウッドは、「クルマ自体にはだいぶ慣れてきたと思う。予選では、計測1周目のTGRコーナーからいきなり雨が増えていった。ブレーキングではABSが強く効いて、クルマが踊るように不安定な状態になりながらもなんとか走ったよ(笑)」と語り、初めてのチームということで安全第一を念頭に置きながらもアタックはしっかりと敢行した。

 翌日、迎えた4時間の決勝レースは、ブルテンによって背負うことになったAドライバーハンデキャップのドライブスルーも消化しながらも奮闘。蘇武がスタートを担当すると、ナタポン、グランツと繋ぎ、最後はナタウッドがチェッカーを担当。レースが進むにつれて気温と路面温度がどんどん下がっていく難しいコンディションを走り抜けてクラス8位でチェッカーを受けた。

 タイランド・スーパーシリーズではGRスープラGT4を愛機とするDドライバーのグランツは、「富士スピードウェイは初めてだったが、セクター3では高低差も大きいし、天気によっては各コーナーでコンディションが分かれてきたりしてトリッキーな面があった。そのなかでも、このクルマはセッティングも悪くないと感じたし富士スピードウェイに合っているマシンだと感じたよ」と語るなど、初のサーキットを勝手知ったるマシンで攻めたことで新たな学びを得た様子だ。

 そしてCドライバーのナタポンは今回の参戦について、「日本のレースは世界と違って、一緒に走っている多くのドライバーがとてもフェアでクリーンな走りをしていると感じた。初めてのスーパー耐久は、FCYの運用についても慣れることができて勉強になったと思う」と語った。

2023スーパー耐久第7戦富士 Team Noah GR Supra GT4(N.ジャルーンスルカワッタナ/蘇武喜和/N.ホートンカム/S.グラント)

 また、Bドライバーの蘇武も「トラクションコントロールを強く効かせなければ走るのもままならないはず」と語る終盤の難しいスティントを走り切ったAドライバーのナタウッドは「トラックコンディションの変化やレース終盤の気温低下など、直面したあらゆる状況が勉強になった」と語る。

「今回のレースでは、Bドライバーの蘇武さんを含めたドライバーたちとチームメンバーとの間に一体感のあるチームワークを感じた。そこは僕たちチーム・タイランドがまだまだ参考にしていくべき点だと思った」と感じたと明かし、今回のスポット参戦で感じた学びを語った。

 チーム・タイランドメンバーの、「世界と戦っていけるということをアピールしたい。タイのモータースポーツをもっともっと押し上げていきたい」という強い想いも原動力となって実現した今回のスポット参戦。チームのレースレポートによると、チーム・タイランドは2024年シーズンのスーパー耐久シリーズへの参戦を検討中とのこと。体制についてはチームからの続報を待ちたいが、チーム・タイランドが日本のレースへと復帰する日も近いかもしれない。

2023スーパー耐久第7戦富士 N.ジャルーンスルカワッタナ/蘇武喜和/N.ホートンカム/S.グラント(Team Noah GR Supra GT4)

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