重伝建地区の富山県高岡市吉久に喫茶店 東京から移住の夫婦、景観生かし交流の場に

コーヒーをいれる柴田さん(左)と妻の馨子さん

 今春、定年退職を機に東京から高岡市吉久に夫婦で移住した柴田健太朗さん(60)が、地元で喫茶店をオープンした。実家は国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定されている風情ある町並みにあり、立地を生かそうと市の開業支援制度を活用して店舗兼用に改装した。「地元の人や観光客の交流の場にしたい」と話している。

 柴田さんは父親の転勤で生後間もなく高岡市吉久から徳島県へ引っ越し、中学から東京へ移った。25歳で都内のコーヒー製造販売会社に入社。コロンビアやブラジルといったコーヒー豆の産地で栽培を管理したり、国内で豆の選別や加工を担ったりした。

 社会人になってからは年に1度は吉久を訪れ、「さまのこ」と呼ばれる千本格子を備えた町家が並ぶ景観や人の温かさに魅力を感じていた。今春、これまでの経験を生かして第二の人生を歩もうと、吉久に移り住んだ。

 店名は「よっさ柴屋」で10月に開店した。旧街道沿いに位置する木造2階建ての実家を、半年かけて床の間と廊下を改修して10畳ほどの店舗スペースを設けた。現在はグアテマラの豆を主体としたブレンドコーヒーを提供している。華やかな香りと柔らかな酸味が特徴だ。

 市は勝興寺(伏木古国府)の国宝指定を受け、市北部エリアのにぎわい創出を進めている。昨年度から開業支援制度の対象区域に吉久が追加され、柴田さんはこの制度を利用した。

 共に店を切り盛りする妻の馨(けい)子さん(65)は「吉久は伝統を大切にする風土が根付いている」と魅力を語る。柴田さんは「みんなが気軽に集える店をつくり、おいしいコーヒーを楽しんでもらいたい」と話す。火、水曜定休。

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