ケーエスケーら、ドローンと配送ロボットを活用した医薬品配送の実証実験を実施。大規模災害が発生したケースを想定

本実証実験は、大規模災害の発生により陸路での医薬品の長距離配送ができない場合を想定したもので、ドローンを活用して医薬品を遠隔地に配送し、ドローンの着陸地点から患者宅へは配送ロボットが医薬品を運搬する運用の実用化に向け、実施したものという。

着陸態勢のドローン

背景

和歌山県のほぼ中央に位置する日高川町は、総面積の約9割が森林で、中央を流れる日高川の下流域には比較的人口密集地域があるものの総体的には集落が点在している。また住民の高齢化も進んでおり、大規模な災害等により陸路が利用できない事象が発生した場合に、医薬品を必要とする医療機関や患者等に遅滞なく医薬品を供給する手段の検討・構築が求められている。

一方で、ケーエスケー、和医大およびNTT Comは、将来的なドローンによる医薬品配送の実現を見据えて以前より協議を重ね、本年3月30日には和歌山市内で最初の実証実験を実施し、実用化に向けた次のステップの検討を進めてきた。

https://www.drone.jp/news/2023041916390165508.html

このような中、ドローンの利用については、昨年12月5日に施行された「航空法等の一部を改正する法律」により、「[1] 機体認証」、「[2] 無人航空機操縦者技能証明」、「[3]運航ルール」の基準を厳格に設けることによって、2023年以降を目途に「レベル4」飛行の段階的な飛行実現を可能とするロードマップが示されている。

上記の背景を受けて5者は、ドローンを活用した医薬品の長距離配送と配送ロボットを活用したラストワンマイル運搬の実証実験を実施し、その有効性を検証することとした。

なお、今回の実証実験は、国土交通省の「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」に採択されたものだ。

本実証実験の概要

本実証実験では、近畿地方に根差した医薬品卸売業者であるケーエスケーが、日高川町の国保川上診療所から医薬品の発注を受けたことを想定し、入野集落センターから日高川町美山公民館までドローンを活用して偽薬を配送した。

ドローン到着後、医療従事者が顔認証を用いて本人確認を行い、配送ロボットに偽薬を積み替えました。配送ロボットは、患者役の元まで偽薬を運搬し、患者役が偽薬を受け取る際にも音声通話及びQRコードによる本人確認を行った。

配送ルート(ドローン)
配送ルート(配送ロボット)  
使用したドローンと配送ロボット

各者の役割

本実証実験における検証結果

輸送品質・時間

保冷ボックスの内部には温度センサーと加速度センサーを搭載し、内部が適切な状態で輸送できているかを確認しながら、日高川の上空を通過する「レベル3」相当の飛行カテゴリにて、18分59秒で約21km離れた日高川町美山公民館まで配送した。一方、同時に出発した自動車は約42分34秒で到着した。

顔認証による受領者確認

到着したドローンから、病院関係者が偽薬を受領する直前に、AI顔認証ソフトウェア「SAFR」を用いて顔認証による受領者認証を行い、医療従事者が適切に受領していることを確認した。

配送ロボットの活用

ドローンで運ばれた偽薬は配送ロボットに積み替え、約150メートル離れた患者役の元に運搬し、音声通話およびQRコードによる本人確認を経て無事届けられた。

ドローンと配送ロボットの位置情報把握

NTT Comが提供する「RobiCo」の一部機能をカスタマイズし、ドローンとロボットの位置を常時把握することにより、到着地点ではドローンから配送ロボットへ偽薬の迅速な積み替えを実現した。

IoTプラットフォームを活用した温度/加速度のデータ測定

輸送中のコンテナ内温度や加えられた衝撃などのデータを「Things Cloud」を用いてリアルタイムに可視化し、偽薬がトラブルなく患者役の元へ届けられた事を確認した。

今後の展開

本実証実験の実施により、配送時間や温度管理・振動対策といった面では、ドローンの長距離飛行による配送は十分に実運用が可能であることが確認できた。

今後は、天候などの外的要因による飛行条件や、一度に運搬できる積載量の制限など、残された課題への対応を進めるとともに、レベル4での飛行検証や和歌山県内に複数あるへき地診療所およびその周辺に在住する患者への医薬品提供を想定した実証実験を行う予定だとしている。

▶︎ケーエスケー

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