「スイングのタメは正確性UPのため」米澤蓮

中島啓太、金谷拓実、蝉川泰果、平田憲聖…と今年の男子ツアーは毎週のように若手の誰かが入れ替わりで活躍している。お互いが刺激し合う相乗効果で、まさに“強い世代”を形成しつつあるのは間違いない。彼らはどんな経歴でゴルフをしてきたのか、そしてどんなスイングをしているのか。「U-25世代」の若者たちにスポットをあて、彼ら自身の口でスイングをセルフ解説してもらった。

独学でゴルフを覚えスイングを作ってきた

5回目に取りあげるのはツアー2年目の24歳、岩手県出身の米澤蓮だ。ほぼ独学でゴルフを覚え、小学生の頃から数々のジュニア競技で優勝してきたという、ジュニア時代からコーチをつける選手が多い今どきの若手プロにしては珍しい経歴の持ち主。大学は数多くのプロを輩出している東北福祉大に進学し、一つ上の学年には金谷、同期には杉原大河、一つ下の学年には蝉川がいて、まさに強者にもまれてきた。大学1年時からナショナルチーム入りし、2018年には金谷、中島らとともに「アジア大会」で団体戦の金メダル獲得に貢献。21年のファイナルQTを終えてプロ転向、22年はABEMAツアーが主戦場だったが、同年のファイナルQTで今年のレギュラーツアー前半戦の出場権をつかんだ。

今季はトップ10が3回、直近の「カシオワールドオープン」では優勝争いを演じて2位タイでフィニッシュし、最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」出場権(賞金ランキング上位の資格)をゲットした。初優勝まであとわずか、急成長を遂げている24歳のスイングを紐解いていこう。

アイアン型のショットメーカー 「タメ」が命

―自身のスイングについて特徴的な部分はどの辺りですか?

自分はしっかりとタメてくるタイプだと思うんですよ。アイアン型のプレーヤーだと思っていて、ショットメーカータイプ。切り返しからしっかりタメを作るスイングが特徴ですかね。

―タメを作ることのメリットは?

やっぱりダンブローに打ちやすいですよね。インパクトでハンドファーストに当たるので、アイアンでもタテ距離のコントロールがしやすい。タメがあることでフェース面の管理も簡単になるので、ボールも曲がりにくいと思います。タテもヨコもコントロールできるので、インパクトの正確性はすごく高くなります。

―ドライバーでもタメを作っている感覚はありますか?

うーん、ドライバーはあまりタメすぎて上から打つと飛ばないので。何と言ったらいいんですかね、もうちょっとタメない打ち方をしているというか…。

ドライバ―はアイアンほどタメすぎない(撮影/服部謙二郎)

―ドライバーとアイアンはスイングを変えているということですか?

違うスイングかというと微妙ですね。振っている感覚としては同じ。でも、当然ドライバーとアイアンでスタンス幅も違いますし、ボール位置も違う。ドライバーはティアップもしますし、セットアップは変わります。ドライバーを最大効率で飛ばすためには、アイアンと逆の動きをしなきゃいけない。それは物理の話で、アッパー軌道で打たなきゃいけないもの(ドライバー)と、一方でアイアンはアッパー軌道で打ったらダメなもので違いがあります。体を作り上げてヘッドスピードを上げて、ドライバーでもダウンブローで打って飛ばすというやり方もあると思いますが、自分がやるのはすごく難しい。やっぱり飛ぶ分だけ曲がりやすいというか、それだけを追い求めてもどうかな、という部分もあります。

―体を変えるというよりは、クラブの特性を生かして最大効率で飛ばすことを考えているということですね。

そうですね。トラックマン(弾道計測器)などを使って普段練習しているのは、自分のスイングをチェックするという理由よりは、「クラブがどういう動きをしてるか」や「シャフトを替えたらどういう動きになるか」を確認したいから。自分が変わるのが一番リスクのある話で、自分はあくまで同じスイングで、クラブが違う動きしてくれたほうが絶対に簡単。自分のスイングにはどういうシャフトが合うのか、どのぐらいのロフトが合うのかを考えたほうがいい。ゴルフは幸いにして道具を選べるスポーツですから、ルールの範囲内でそこは大いに使うべきと思っています。例えば自分の場合はドライバーなどでも上から入りやすいので、ハイロフトのドライバーを選ぶようにしています。

ナショナルチームのガレス・ジョーンズコーチ(写真左)とは今も連絡を取ってアドバイスをもらっている(撮影/亀山泰宏)

―スイング中に、体の動かし方で特に気を付けていることは?

バックスイングをデカくしすぎないことですかね。トップの位置を上げすぎちゃう癖があるんですよ。

―オーバースイングになるとやっぱりよくないということですか?

極端な話をすると、バックスイングでクラブを上げている途中に下半身を切り返したら、どのみち遠心力が働いてクラブは上に上がっていくじゃないですか。実際はその大きさで十分で、無理に自分でバックスイングを大きくする必要はないと思っています。

―つまり、バックスイングの途中で切り返す感覚ということですか?

そうですね。上げている途中からしっかりと左に踏み込むというか、体重を左へしっかりとシフトさせています。地面をこう踏んできたら、嫌でもタメができてくる。実際はもっと踏みこみたいんですが、踏みすぎるとクラブが外から来ちゃうことがあって、今はそのバランスを探しています。基本は自分ではなくクラブに仕事をしてもらいたいというのが根本にあります。

切り返しの踏み込みは強い(撮影/服部謙二郎)

―試合中にスイング面で注意していることはありますか?

打ち急がないことですかね。試合になるとだいたいリズムが速くなって、打ち急ぎのミスが増えます。

―打ち急いでいる場合、試合中にどう修正するんですか?

正直スイング中って無意識だと思うんで、なかなかコントロールするのは難しい。でも自分のミスの傾向を知るのはすごくいいことで、その日にどういうミスが出やすいのかを理解しながらプレーすることが大事だと思っています。例えばリズムが速いと、振り遅れも出るし、引っ張って左にも出る。それが納得できるミスだったのか、防げたミスなのか、ミスが出たあとに振り返るようにしています。その積み重ねがあって、自分がプレーする環境に慣れたりとか、自分に自信がついてくれば、自ずとリズムがゆったりになって自信を持ってプレーできるようになると思っています。

そのアプローチの柔らかさはベテランプロも舌を巻くほど(撮影/服部謙二郎)

最後に「一番得意なクラブは?」と聞くと、持っていたウェッジをスッと上げた米澤。聞けば、幼少の頃は近所のゴルフ好きのおじいさんの家の空き地で暇さえあればアプローチをしていたという。「ただの空き地なので草がボウボウのところもあれば、草がはげているところもあって、ベアグランドからスピンをかけるようなことも遊びでやっていました」と、その遊びがいまに生きているのは間違いないだろう。決して飛ばし屋ではないが、噛めば噛むほど味の出るベテラン顔負けのプレーヤー。読者の皆さんも24歳のテクニックをじっくりと味わってほしい。(取材・構成/服部謙二郎)

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